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2023/05/30

ワグネル総帥ブリゴージンが「ウクライナが領土奪回、ロシアの行く末は暗雲」と恨み節

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バハムートでワグネル撤退の指揮を執るプリゴージン(2023年5月25日付BBC記事「Ukraine war: Wagner says Bakhmut transfer to Russian army under way」より)

ウクライナ攻勢開始前夜の戦線の静寂
 2023年5月29日現在、ウクライナの反転攻勢が固唾をのんで待たれる中、まだウクライナ軍の攻勢作戦は開始されている兆候はなく、バハムートも含め戦線は全般的に大きな動きが,ウクライナ側もロシア側にもありません。(参照:2023年5月28日付ISW記事「Russian Offensive Campaign Assessment, May 28, 2023」)
 ウクライナの攻勢開始については、3月末の段階では融雪期の泥濘が懸念され、4月の攻勢開始は難しいという読みもありましたが、4月どころか5月も過ぎ、結局6月になろうとしています。ウクライナはいまだ作戦準備中。やはり西側供与の装備の戦力化が時期を押していたようですね。西側から供与された(予定含む)戦車・戦闘機ほか装備がウクライナ兵の手で戦力化するには時間を要したようですが、ゼレンスキー大統領はじめ主要閣僚や軍首脳の「まもなく攻勢」発言もあちこちで聞かれるようになり、中には「今後数ヶ月以内には攻勢を開始するだろう」というかなり気の長い見方もある中、「多少の見切り発車もやむなしとして間もなく攻勢を開始するだろう」との見方が有力です。

ワグネル総帥ブリゴージンがウクライナ優勢と読みロシア軍やプーチン大統領に恨み節
 ワグネル総帥ブリゴージンは、バハムート主要部を占領・奪取したものの、バハムートに長居するとウクライナ軍に包囲されて袋のネズミとなる脅威、及びのんびりしているとウクライナの大攻勢が始まってしまう脅威を肌で感じ、「ロシア軍にバハムートを譲る」と格好のいいことを言ってサッサと後方にトンヅラしました。そのブリゴージンが、有名な軍事ブロガーと対談した映像を発信しています。相変わらずの言いたい放題ですが、ワグネルに対して冷遇する軍首脳やプーチンに対する当てつけ的な恨み節のつもりなのでしょうが、興味深い内容が含まれているのでご紹介します。 (参照:2023年5月27日付Newsweek記事「Wagner founder predicts Ukraine can "easily" win back territory from Putin」)
 
 ブリゴージンの読みでは、ロシアの行く末は悲観論と楽観論の2つのシナリオがあるが、楽観論は蓋然性が著しく低く、どう考えても今後の見通しは悲観論的シナリオになろう、というものです。その「より蓋然性の高い悲観的シナリオ」というのが次のようなものです。

 ウクライナの攻勢が開始されると、ウクライナは2014年以前の元のロシアとの国境線まで比較的簡単に奪回するだろう。特に、特筆すべきは、その奪回する領土にはクリミア半島も含まれており、その過程でクリミアは攻撃され、ロシア本土からの重要なアクセスであるクリミア大橋は爆破・遮断され、ロシアは後方補給線を断たれる。戦略的重要性を有するクリミアという地政学的意義の高い黒海に張り出した拠点を、ロシアは失うことになるだろう。

 これは、ブリゴージンのロシア軍首脳やプーチンに対する、よく言えば「警告」、悪く言えば「恨み節」です。ワグネルやブリゴージンへの共感や支持を得ようという目的の下、この主張を広くロシア国民に見せ、国民を煽り、もってロシア当局や軍首脳、端的にはプーチン大統領の権威や体制を貶めようという策なのでしょう。


 いやー、いよいよ面白くなってきましたね。西側としては「やれやれぇー」と焚きつけたいところですね。もはやプーチンも自ら子飼いの飼い犬に手痛く手を噛まれ、ただでは済まさんぞ!とさぞや激怒していることでしょう。暗殺するかも・・・。

 ともあれ、やけくそ的なロシアのウクライナの首都キーウ等への無差別のミサイルやドローンの攻撃が続き、無垢の市民の被害が続く中、いよいよ待たれるのは本格的な攻勢開始ですね。それはそれで多くの死傷者が出る惨禍が起きることは間違いありませんが、なるべく早期にこの地に戦いのない平穏な日々が戻ることを祈ってやみません。

 頑張れ、ウクライナ!
 勝利の日まで・・・。

(了)

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