プーチンがプリゴージンと会っていた:反乱収束,No SideをPRしたいプーチン=矛盾が示すプーチンの末期症状

プーチンとプリゴージンのホームタウンであるサンクトペテロブルクの市場でお土産として売られている二人のお面 【筆者の独り言ですが、お面にされるという国民感情は人気なのでしょうか?半分こき下ろしているのでしょうか?】)(Face masks depicting Wagner chief Yevgeny Prigozhin and Russian President Vladimir Putin on sale at a souvenir market in St Petersburg last month)(2023年7月11日付BBC記事「Putin meets Prigozhin: Getting to grips with latest twist in Wagner saga」より)
プーチンがプリゴージンと会っていた:反乱収束,No SideをPRしたいプーチン
7月10日(月)にロシアのペスコフ報道官が、プーチン大統領がプリゴージンをクレムリンに招いて会合を持っていたことを発表しました。まさに驚愕のニュース。しかも、その会合は反乱収束のわずか5日後の6月29日、しかもワグネル部隊指揮官35名も招待され、3時間もかけ、プーチン大統領はワグネル部隊のこれまでの活躍を高く評価し、指揮官たちの話にも耳を傾け、今後のロシア軍としての雇用オプションを提供した、というから2度ビックリ。更に、プリゴージンはプーチン大統領にワグネル部隊の国家や大統領に対する忠誠を誓った、というから3度目は呆れました。(※1)
確かに、この発表の前の数日で、「あれ?」と思う、変化の兆しが出ていたのかも知れません。7月6日のベラルーシのルカシェンコ大統領の「プリゴージンはベラルーシにはおらず実はロシアに所在している」発言や、その後プリゴージンがロシア国内で比較的自由に行動している情報などが出始めていました。よって、ロシアにしてみれば、「匂わせ」的な情報を小出しに出して、今回の情報を出す兆候はちゃんと事前に示し、予告していたのかもしれません。
それにしても、矛盾だらけ。西側メディアの勝手な憶測報道はともかくとして、反乱当時から反乱収束後も含めて、これまでのロシアの政府や大統領の公式な発表や施策とはあまりに矛盾の多い発表ですよね。しかも、この話をペスコフ報道官が発表しているので、「ロシア当局筋の情報」などという不確かな情報源ではなく、ロシア国家としての公式な見解として世に示したわけですから。
私見ながら、逆説的に、これまでの公式情報とは矛盾するがゆえに、プーチン大統領はこの辺でこの情報を出すことで、内外に認識の修正をしようということなのでしょうね。特に、ロシア国内の一般国民や最前線で戦うロシア軍部隊の将兵に対し、「反乱は名実ともに収束しました、敵も味方もなくノーサイドになりました。今後の禍根は残らず。よかった、よかった」、「偉大なるプーチン大統領は改めて忠誠を誓ったプリゴージンやワグネル部隊を寛大にお許しあそばされました。」と広報することで、一般国民やロシア軍将兵の動揺の沈静化を図るべくPRした、ということでしょう。プーチン大統領にとってみれば、これをもって貸しを作ってしまったはずのベラルーシのルカシェンコ大統領に、もはやその貸しは無効になったぞ、とPRしたいのだと推察します。
矛盾が示すプーチンの末期症状
しかし、….これまでのプーチン大統領やロシア当局の発表や施策とはどうにも整合しません。やはり、この矛盾を違和感に感じているのは、ひねくれた私だけではなく、西側の方々は勿論、多くのロシア国民も違和感は否めないのではないでしょうか。
なぜならプーチン大統領は反乱当時、プリゴージンやワグネル部隊を「国家に対する反逆」として断固「許さない。潰す。」と発言していましたし、反乱収束後もプリゴージンに対しては「反逆者」との表現を、少なくとも10日のペスコフ報道官の発表以前は、一貫して変えませんでした。(ワグネル部隊に対しては、愛国者であり勇敢に戦ったと寛容を示していましたが) また、ロシア当局としても一貫してプリゴージンに対しては厳しく処断する姿勢を見せ、プリゴージン邸に対する家宅捜索も公表し、隠し財産の金の延棒や各種贅沢品も公表して、間違いなく明確にプリゴージンの社会的地位や名誉を貶めていました。
明らかに、当初は「処断」を腹に決めていたはずです。ベラルーシに国外追放しつつ、国内的には社会的地位を貶め、未だ根強い支持を得るプリゴージンへの名誉と信頼を失墜させようとしてきたはずです。それが、それを片や政府の施策として実行させつつ、もう片方の手で、秘密裏にクレムリンにプリゴージンとワグネル部隊指揮官を招き、膝まづかせて忠誠を誓わせた代わりに許しを与え、3時間もかけて懇談した、しかも更に数日後に結局それを公表した?….
これが一貫した方針の下で決められたわけはありません。要するに、プーチンはプリゴージンの処断に揺れ動き、右に触れ左に触れたあげく、「お互いの誤解は晴れた。彼らは皆真の愛国者であり、引き続き国家や(プーチン)政府に対して忠誠を誓っているので、政府としても彼らを許すことにした。これで、ノーサイド。今後一切の遺恨も禍根もない。」という形での大団円を幕引き演出する形に、後付けで修正演出したわけです。プーチンは悩んだあげく、こういうことだったんだよ、と歴史を塗り替えようとしているのです。
間違いなく、これは現在のプーチンの揺れ惑う判断や精神状態の表れでしょうね。もはや末期症状です。何とか、自分の治世を続けたいがための、延命策に外なりません。まさにこれこそが現在のプーチンの弱さを露呈していると言えましょう。一昔前のプーチンであったなら、プリゴージン率いるワグネル部隊は殲滅されていたでしょう。それが、今のプーチンにはできないのです。なぜなら、前回のブログでも言及したように、反乱の渦中でロシア内務省が実施した世論調査結果で、反乱首謀者プリゴージンとプーチン大統領の政府の支持は概ね真っ二つに支持が割れていた(※2)、という報告にプーチンは驚愕し、反乱者に対して強硬な策で潰そうとすると、国民の信を得られず、プーチンが一番恐れるプーチン自身が失脚することになることに至る可能性をミニマイズしたかったのでしょう。これがプーチンの逃れられない恐怖心として頭から離れず、今回のようなノーサイドに、方向修正したのであろう、と推察します。
(参照: ※1 2023年7月10日付ISW記事「RUSSIAN OFFENSIVE CAMPAIGN ASSESSMENT, JULY 10, 2023」、同年7月11日付BBC記事「Putin meets Prigozhin: Getting to grips with latest twist in Wagner saga」、ほか内外各紙、
※2 2023年7月6日付Newsweek記事「Russia 'On the Edge of Civil War'—Ukraine Spymaster」 )
頑張れ!ウクライナ、
いよいよプーチンの馬脚が露わになってきたぞ、
奴も弱っている、ロシア国民もロシア軍将兵ももう疲れている、
勝利の日は近い!
(了)


にほんブログ村

国際政治・外交ランキング
スポンサーサイト
コメント
No title
=ワグナー・グループ (Wagner Group)
ワグネルのプリゴジン氏、アフリカの金鉱山からも資金調達…現金で直接運ぶ
https://www.yomiuri.co.jp/world/20230628-OYT1T50084/
アフリカ鉱山や金でワグネル資金調達か 米、関連4社など追加制裁
https://www.sankei.com/article/20230628-3AEDC22JNNKWFJBQR6L3X7LT5I/
は、
ヴィルヘルム・リヒャルト・ワーグナー
(ドイツ語: Wilhelm Richard Wagner,(1813年5月22日 - 1883年2月13日)は、19世紀のドイツの作曲家、指揮者、思想家。
と同じ名前です。
ルネサンス(仏: Renaissance伊:Rinascimento)は、「再生」「復活」などを意味するフランス語であり、
一義的には古典古代(ギリシア、ローマ)の文化を復興しようとする文化運動。
『オペラとドラマ』でワーグナーは、古代ギリシャ人の芸術を再生できるのはドイツ人であると論じ、
また死滅したラテン語にむすびついたイタリア語やフランス語とは違って、ドイツ語は「言語の根」とむすびついており、
ドイツ語だけが完璧な劇作品を成就できる、と論じた。
ヒトラーがワグネリアンであったことと相まって、のちにナチスに利用された。
「ベラルーシ」の国名の由来は、中国から学んだ文化である「方角を色で呼ぶ方法(五行思想)」をルーシに持ち込んだ。
そして、白ルーシ(ベラルーシ)が国名として残ったと言われている。
従って、源流は「ギリシャ正教」から「東方正教会」(ベラルーシ)、「ロシア正教」、最後は、日本の「古神道」となる。
ご参考まで
「成 道成チャンネル」
https://www.youtube.com/watch?v=Ua_YKXQ6Hzs
2023-07-22 01:16 成 道成 URL 編集