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2019/02/05

米韓同盟の決裂は回避できるか?

米韓同盟の決裂は回避できるか?

来る平成31年2月末、ベトナムのダナンでの二回目の米朝首脳会談を前に、頭の整理としてこの記事を書きました。ここで在韓米軍の撤退の密約があるかもしれない、否すでに密約しているかも、と思っています。
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1 米韓同盟は今や決裂の危機 
  最近のVOA(平成31年1月31日付(日本時間2月1日))にて、在韓米軍駐留維持のための協定が合意を得ないまま保留になっている問題をとりあげ、「好転」を予測する記事が出ました。駐留経費を出し渋る韓国に対し米国側が苦り切っている状況ですが、問題の本質は当然、ただの経費問題ではなく「在韓米軍の駐留継続の危機」ないし「米韓同盟の決裂の危機」の問題です。しかし、私見ながらそれは甘すぎるでしょう。
  結論から言うと、
 ① VOA記事にて、在韓米軍をよく知る専門家が「在韓米軍駐留維持のための協定は、これまでの米韓の強い絆が基盤にあるので、早晩解決する」と予測
 ② しかし、問題は「駐留維持経費をめぐる意見の相違」などではなく、「在韓米軍の撤退」、「米韓同盟の決裂」が本質的な問題。米側の苛立ちも限界。もはや瀬戸際。トランプ政権では過去事例はあてにならず、早晩、トランプは韓国を見限る可能性大。
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           在韓米軍のシンボルマーク(部隊章) 

2 VOA記事のポイント
  VOA (Voice of America) 平成31年1月31日付(日本時間2月1日)、「専門家曰く、駐留経費問題は米韓の絆があるので好転するだろう」(※ ”Experts: US-S. Korea Ties Can Weather Troop Cost-Sharing Dispute” (VOA: January 31, 2019 10:15 PM, Christy Lee))という記事の概要は以下の通りです。
  (※ https://www.voanews.com/a/experts-us-s-korea-ties-can-weather-troop-cost-sharing-dispute/4768150.html )
 * 在韓米軍の駐留経費をめぐる協定(Special Measures Agreement (SMA))について米韓で交渉中だが、協議は暗礁に乗り上げ、期限は昨年末に切れたまま。米韓同盟の不協和音や在韓米軍の撤退ないし縮小は北朝鮮の思うツボ。トランプ大統領が北朝鮮との2回目の首脳会談にて「在韓米軍撤退」を言い出す可能性があり、周囲は懸念。
 * 昨年の交渉で、米側は在韓米軍28,500名のホスト国としての韓国の経費負担として8億5千万ドルを要望し、韓国側はこれを受け入れず。また、米側は5年の更新期間を毎年に変更するなど、度々譲歩を示したが韓国側は受け入れず。既に昨年3月以来10回の協議を実施したが難航中。
 * しかし、元米国防情報局分析官、元米韓連合軍司令官ほか元在韓米軍OB、等は、「協議の難航はこれまでもあった。これまで同様、相互の譲歩で最終的には合意に達するであろう。」、「これまでの米韓の軍事努力がいかに北朝鮮を抑止してきたか、想起すべし。米韓同盟を弱くするようなことはあってはならない。」、「米韓同盟に基づく、結束の強さは必ず問題を解決する。」、等と述べ、状況の好転を予測。
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(United States Forces Korea > Media > Images, Gen. Soon Jin Lee, commander of Republic of Korea Army 2nd Operational Command,)

3 VOA記事への評価
  私見ながら、VOAの記事に対し、少々認識が甘すぎませんか?問題の本質は協定合意の問題じゃないでしょ?在韓米軍撤退とか同盟の終焉とか、そういう切実な問題でしょ?、という所感を持ちました。
  在韓米軍をよく知る専門家が「在韓米軍駐留維持のための協定は、これまでの米韓の強い絆が基盤にあるので、早晩解決する」と予測しているわけですから、国際安全保障のこれまでの常識に基づく穏当・適切・現実的なコメントだと思います。しかし、トランプ大統領という決定的要素、及びジョーカーとしての文大統領の政治姿勢を考えると、認識が甘いと思います。
  現在の変化要因を踏まえると、コメントされた専門家方のご意見は楽天的に過ぎます。第一、「好転」の根拠が「過去はそうだった」という過去の経験だけというのが緩すぎる。コメントを求めた専門家の方々の人選が誤っていますね。元のキャリヤでの経験・識見からのご発言なのでしょうが、認識が昔すぎる。これまでもこのSMAという協定協議では何度も同じような難航があったようで、「その度に相互の譲歩があり、最終的には合意を見た」、ようですね。誠に尤もな話なのですが、問題は現職大統領が常識からはみ出たトランプ氏であり、韓国もこれまでと全く違うタイプの常識外れの文氏なのです。米国の欧州との軍事同盟からの撤退に度々言及するトランプ大統領、米韓首脳会談後に既に合意した事項を中国の怒りを買わないように撤回した文大統領、など、ここ最近の発言や行動は、もはや従来の国際安全保障の「常識論」では理解できないことが現実化しているのですから。
  私の問題認識は、在韓米軍駐留経費の問題で協定合意が得られるかどうかではなく、あくまで「在韓米軍の撤退」や「米韓同盟の決裂」という事態が回避できるのか、です。百歩譲って、専門家の方々の言うように「これまで同様に」協定合意が得られたとしても、それは今駐留している米軍の暫定的な経費負担の合意であって、問題の本質は「米韓同盟」が本質的に回復できるのか、トランプ大統領によって見限られるのか、が勝負です。私の見立てでは、後者です。決して期待していません。そうなると東アジアの戦略環境は激変し、日本への負担が強まるので望ましいことではありません。しかし、冷静にトランプ大統領や文大統領の政治姿勢を分析すると、最終的にはトランプは韓国を見限るのだろうとしか思えないのです。

4 米韓同盟のストレスチェック
(1) 韓国側の背景
  今回の米韓軍事同盟上のストレスは、(これまでもあった要因はさておき)全て韓国文在寅政権の政策に起因しています。文政権の命脈は民族の悲願「南北の和解・統一」の推進、親米一辺倒から「Noと言える韓国」へと転身、国民の歴史的な日本への恨みを焚き付け徹底的に対峙する政治姿勢。この対北宥和を主軸とした対米面従背腹、対中協調、そして意固地な反日政策が根源です。それが国内で一定の支持(最近落ち目の模様ですが)を保っている所以でもあります。在韓米軍に関しては、沖縄の反在日米軍問題と同様、国民の反在韓米軍感情がありますので、この協定のようなホストネーションサポートの話には反感を持たれます。文大統領にとっては、南北和解・統一の前に横たわる最大の障害が在韓米軍の存在。しかし、国内には対北鮮宥和政策への反対派、対米協調派も根強くいます。韓国側から米国に在韓米軍撤退や同盟決裂とは言い出せません。従って、在韓米軍の撤退は米国側から持ち出させたい。南北首脳会談で、親密に金正恩第一書記と文大統領がサシで会談している場面を皆さんもニュースで見たと思いますが、南北の首脳間で握っているのではないでしょうか。それが中国が望むものでもあります。
しかしながら、この辺が韓国の屈折したところなのですが、米側から在韓米軍撤退を言い出させたい、と標榜する一方、それでも引き続き米韓の絆は盤石であり、米国は韓国に核の傘を提供し、盟友としての地位は続くと夢想しています。おかしな話ですよね、南北は和解、中国とも強調、しかし米国とも協調し盟友関係。在韓米軍は撤退してもらうが米韓同盟は維持してもらいたい。そりゃ矛盾してますよ、在韓米軍の撤退は軍事同盟関係の終焉を意味するとは考えられないのでしょうか。
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(19日、THAADが配備された慶尚北道星州郡草田面韶成里会館前で開かれた第4回韶成里平和行動で、参加者たちが「THAAD配備反対」を叫んでいる=星州/キム・イルウ記者//ハンギョレ新聞社)

(2) 苛立つ米国
  米側の苛立ちはもはや限界に来ているようです。
  米国政府内で、米韓同盟の解消はオプションの一つとして真剣に検討中です。既に実務レベルからも明確な警告が出ています。決定的だなと思ったのが、昨年11月末にハリス在韓国大使の「米韓同盟を当然視すべきではない」(「月刊朝鮮」:11月28日付)という趣旨の発言です。
  この辺の事情に詳しい「米韓同盟消滅」という本を書かれた鈴置高史氏の記事が的を射た分析をされています。「『米韓同盟消滅』にようやく気づいた韓国人 -文在寅は米国に「縁切り」を言わせたい-」(日経ビジネス、2018年12月7日)( https://business.nikkei.com/atcl/report/15/226331/120600206/?P=1 )を是非ご一読を。
  同氏は、
 * ハリス在韓国大使は、文政権の北鮮への制裁緩和に熱心で非核化の妨害をしている政治姿勢に対し、遠巻きながら明確に嫌悪感を表し、「米感同盟を当然視するな」の発言をしたこと(11月28日)、
 * まるで「金正恩の主席報道官」のような文大統領の態度に業を煮やし、トランプ大統領が「韓国は米国の承認なしに何もできない」と3度繰り返し発言し文大統領を叱責したこと(10月10日)、
 * 朝鮮日報の元主筆が、フィリピンが当時駐留していた在比米軍の撤退を求めた際に米軍はアッサリと撤退し、直ぐに中国が南シナ海に覇権を広げ周辺国を脅かし出したことを例に挙げ、ハリス発言は脅しではない、と警告していること(11月末)、
 * 韓国の理解できない行動に苛つく米政府が日本に専門家を派遣し、状況の分析に努めたこと(「韓国はなぜ米国を苛つかせているのか?」と尋ねたという。)(10月)、
 * 12月に予定されていた米韓合同演習ビジラントエースを米軍側がキャンセルを申し出たこと(鈴置氏はこれを米政府の「韓国疲れ」の一環と理解し、「肩を並べて戦うことはない」と米軍も見限り始めている話を例示)(10月)
 * ブエノスアイレスで行われたG20の際、トランプ大統領は韓国とは首脳会談をせず、立ち話(pull aside)に格下げしたこと(11月末)、
 * 更に、同じG20のサイドショーとして日米印の3ヶ国首脳会談が実施され「自由で解放されたインド太平洋に向けこの3ヶ国で進もう」と安倍首相の発言があったこと(同11月末)

 等の事象を列挙しています。
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 5 結言
  前項(2)の鈴置氏の記事、米国側の苛立ちが伺い知れる内容ですね。米側のストレスは限界と言えます。
  さはさりながら、本来の懐深い米国政府なら、優秀かつ現実的かつ狡猾なスタッフが大統領を補佐し、ブラフや観測気球はともかく、実際の外交安保政策に当たっては短慮を慎み深謀遠慮した政策が為されるのが常識です。しかし、くどいようですが、トランプの周囲にはそうした深謀遠慮のスタッフは既に排され、イエスマンばかり。当の大統領はゴーイングマイウェイです。よって在韓米軍撤退、緩やかなしかし確実な同盟解消に至る、と読んでいる次第です。
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(Korean War Games Are No Game | akeratos of Delphi, akeratos of Delphi, U.S. and South Korea soldiers conduct a river-crossing exercise in Seoul, South Korea, in 2016. (Sgt. Christopher Dennis / U.S. Army)

  (了)


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