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2019/03/09

印パ衝突に日本が学ぶこと

印パ衝突に日本が学ぶこと

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カシミールでの印パ住民間の衝突(Pars Today 2016年10月01日付より)

   2019年2月に再燃した印パの衝突は、3月になってようやく落ち着いてきた模様ですね。何よりです。それにしても、インド・パキスタンが英国植民地から独立して以来もう70年も経つというのに、今だに両国民は相互に嫌悪し、競って核武装するまで軍事対立し、カシミール地方は係争地として平素から緊張下にあり続けています。今回の衝突は、自爆テロを契機に憎悪が再燃、報復の応酬、戦闘機の領空侵犯・撃墜などに発展してしまいました。まぁ、治まりつつあるようなので何よりですが、「歴史は繰り返す」論からすれば、緊張は続くし又いずれ衝突は起き得るでしょう。
   私見ながら、今回の衝突を通じ、日韓(朝)がこのようにならないように、と心配 になりました。

○ ポイント
① 印パ紛争の経緯
   英国植民地からの分離独立、ヒンズー教徒とイスラム教徒は相容れ難く、インドとパキスタンに分立。独立後もカシミール地方の帰属や両教徒の間の対立・衝突が続く。
② 対立の構図
   民族・宗教的な差異からの抑圧・被抑圧の関係という史的経緯を経て、生理的反発・DNA的な憎悪へと発展。その憎悪が些細な対立を契機にテロや暴動の形で現れ、それが悲劇を生んで報復の応酬に至る。
③ 日本が学べること
   印パのようなことが日韓(朝)で起きないように、我々は注意しなければいけない。これまではなかったが、一度日韓(朝)の間で衝突やテロが起これば、印パのように報復の応酬にならないとも限らない。特に、マスコミやインターネット投稿者は、徒に緊張や憎悪を煽らないよう、自制し慎重に行動すべきである。自分は見てもいない事件を無責任に煽る行為は、世の怒りを無秩序に拡大し、コントロールの効かない魔物を生みだしかねない。同じアジアの悲劇から学ぶべきである。

1 印パ紛争の経緯
   英国植民地からの分離独立運動が難産ながら功を奏したが、ガンジー師の努力むなしく、ヒンズー教徒とイスラム教徒(ムスリム)は相容れ難く、1947年に英国の調整案でインドからムスリムが多い地域(東西パキスタン)を分離して独立へ。この際、カシミール地方はほとんどの住民がムスリムだがマハラジャ(藩王)はヒンズー教徒という構図であったため、マハラジャはインドに帰属を希望。これがカシミールの悲劇の始まり。帰属をめぐる係争地や相互の地に残る両教徒の衝突が続き、3次にわたる軍事紛争が勃発。第1次印パ戦争は1947年に既述の構図の下で勃発。インドが優勢、国連の調停で治まる。1962年に同じくカシミール地方に国境を接する中国とインドの間で国境紛争があり、中国に事実上押されて停戦。(余談ながら、その悔しさをバネにインドは核開発に走る。これを受けてパキスタンも核開発開始。)カシミール地方の中のインドが実効支配していた地域の統合宣言をしたことがキッカケにパキスタンが猛反発、第2次戦争に。この際の停戦ラインがカシミールを分割し、それぞれ実効支配しつつ、お互いにカシミール全域の帰属を主張。第3次は、インドが東パキスタン(現バングラディシュ)のパキスタンからの分離独立を支援したために印パ間で軍事衝突。結局、インドが優勢のうちに停戦となり、概ね休火山状態に。
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カシミール地方(時事ドットコムニュース 2019年2月15日付より)

   しかし、両国民の相互の憎悪が潜在化し、対立・緊張は今も根強く、時折顕在化してこうして衝突している。21世紀に入っても、2001年にインドの国会議事堂襲撃事件、2008年にムンバイ同時多発テロ(日本人を含む180人もの犠牲者を出す)があった。最近の趨勢は、パキスタンのイスラム過激派がインド側でテロを起こす形が多く、その都度、インドはパキスタンを非難。両国民の憎悪のボルテージは上がった。しかし、今回ほどの直接衝突ではなかった。

   今回の衝突は、2019年2月14日にインドのスリナガルで自爆テロが契機となった。パキスタンから越境してきたイスラム過激派組織が自爆テロを起こし、インドの警察関係者40人以上が犠牲となった。インドはすぐさま非難するとともに、26日にはインド空軍機がパキスタン領内のイスラム過激派組織の訓練基地を空爆で報復。27日、これに対しパキスタン軍がカシミール地方の停戦ライン?上空でインド空軍機を2機撃墜。これに対しインド軍もすぐさまパキスタン空軍機1機を撃墜させた。パキスタンは撃墜した航空機から脱出したインド空軍パイロットを捕虜にとったが、インドに対し対話による緊張緩和をもちかけ、解放すると声明を出した。しかしインド側の激昂治まらず、「どんな代償を払っても、私たちを止めることはできない。」とモディ首相が発表する状況に。
一時は「第4次印パ戦争勃発か?」とか、「印パ間の核戦争の脅威」とまで懸念されたが、3月1日に既述のインド空軍パイロットがパキスタン側からインドへと無事に帰還。3月4日付のVOA記事では、「US: Gulf Countries Helped Ease India-Pakistan Tensions(米国: 湾岸諸国が印パ間の緊張を緩和させた」との報道もなされ、目に見えた緊張緩和へと落ち着きを取り戻した模様。記事によれば、米国トランプ大統領が中東諸国に呼びかけ、特に、これを受けてサウジアラビアのムハンマド皇太子が印パの慰留に努めたらしい。この辺も深堀りするといろいろ面白そうだが、今回の趣旨ではないので割愛する。

2 対立の構図
   対立の原点は宗教及びこれに根差す風俗風習。インドの場合、土着のヒンズー教が土台にあって、カースト制で生来の階層が決められ階級差別があり、外来のイスラム教が抑圧を受け虐げられる低階層に浸透する素地があった。支配・抑圧的なヒンズー教徒を主とするインド一般の勢力と被支配・被抑圧的なムスリム、という対立軸が存在した。本来独立はインドとして他宗教を包含して独立するはずだったが、独立以前に両派の対立と暴力が横行し、死傷者も多数でため、もはや分離せざるを得ず。ムスリムが多かった地域がパキスタンとしてインドから分離独立となったもの。
   鳥瞰すると、民族・宗教的な差異から抑圧・被抑圧の関係という構図があり、長い歴史の中で、両派は相互に対して生理的反発・DNA的な憎悪が脈打つ状態へと発展した、と言えよう。であるがゆえに、平素平穏であっても、両派のお互いへの反発のボルテージは高く、些細な出来事でもエネルギーが蓄積され、ひとたび契機があるとスイッチが押されて一挙に落雷し、じ後は憎悪や怨嗟の応酬となり、しばらく治まらなくなってしまう。
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印・パキスタンが、カシミール停戦ラインで軍事衝突 (Pars Today 2019年2月27日付より)

3 日本が学べること
   印パの対立が生む悲劇は、他人ごとではない。印パのようなことが日韓(朝)で起きないように、とつくづく思う。しかし、「願い」や「思い」ではなく、そこには注意しなければいけないこと、慎重、熟慮、忍耐、などの「努力」が必要なのだと思う。
幸いなことに、日韓(朝)間に印パの例のような宗教的・風俗風習的な対立の構図はない。しかし、民族的な歴史的経緯はどうだろう。日本人の認識と韓国・北朝鮮から見た認識は絶対に格段の違いがあるだろうことは容易に推察できる。我々からすると言われなきほどに、彼らは我々に憎悪感を持っているようだ。恐らく、最近の文韓国大統領の徹底的な反日路線の淵源はそこにある。そしてこれが一定の勢力の韓国人の支持を得ているということがその証左である。
   これまではなかったが、一度日韓(朝)の間で過激グループの衝突やテロが起これば、印パのように報復の応酬にならないとも限らない。例えば、韓国観光中の日本人が反日暴動に暴行される事件が起き、それを背景に、日本観光中の韓国人が嫌韓グループに暴行される事件が起きたとか。そんなことが起きようものなら、お互いのマスコミやネットはさぞ喧伝し扇動することだろう。北朝鮮も喧伝・扇動に参戦してこよう。どのテレビをかけても朝から晩まで日韓(朝)の緊張ネタばかり。ネットは炎上。相互の国民のボルテージは高まり、そんな憎悪や怒りが制御不能なレベルまで高まれば、印パのような報復の応酬に至ってしまうだろう。
   上記の例え話は脇に置くとして、現実の世界で考えていただきたい。現在の両者の関係は、いまだ物理的衝突でなく議論の上だが、それでも緊張のボルテージはこれまでになく高まっているのは間違いない。いわんや南北宥和の進捗や中国寄りに進展していくと、彼らが何かうまくいかなくなった時の怒りや非難の槍先には日本が標的にされよう。そんな時、暴動やテロで日本人が犠牲になったとしても、日本側の一部の過激なグループが相手側に対し短慮な報復に及ばないよう、警察の皆さんにはご努力いただきたい。また、マスコミもネット投稿者も事実報道以上に喧伝することは控え、間違っても国民世論を煽るような論調や論陣を張らないよう、慎重な対応をしてもらいたい。
   そうでなくても、特にネット上に嫌韓ネタを書く方が多いことには正直言って辟易する。確かに、最近の韓国の対日姿勢には腹に据えかねるものがあり、そうした嫌韓ネタが世にうけるのは理解できなくはない。しかし、それと単に民族的憎悪をかき立てることとは違う。憎悪や怨嗟の行きつく先に明るい未来は開けないのだから。


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コメント

非公開コメント

今回の記事は身にしみますね。
安倍政権が実際に関税の発動まで踏み込むのか、冷戦時代の米ソを思い出しました。

No title

インドやパキスタンのマスコミはジャーナリズムのあり方としては機能しませんでした。さて、日韓(朝)の緊張が更に高まった時、日本のマスコミは高ぶる一般の人々を煽らずに本来のジャーナリズムの機能を果たしますかね?