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2018/08/27

マクナマラの教訓 ③キューバ危機: 核時代におけるもう一つの教訓 


<映画「フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白」に学ぶ ③キューバ危機:核時代におけるもう一つの教訓>

 今回は、前回の「キューバ・ミサイル危機」における危機管理上の教訓に加えて、マクナマラが反省教訓事項と捉えたもう一つの点に着目し、2点目の教訓 「合理的判断が必ずしも我々を救うとは限らない。Rationality will not save us. 」について反芻してみます。
 前回見てきたように、キューバ危機に対して米側ケネディ陣営は、ケネディ陣営と同様にソ連のフルシチョフ陣営も危機管理の出口を探して悩んでいるに違いないと考え、相手側にもお互いに折り合いがつけられる条件を交渉し、お互い自国内や関係国に説明ができるよう名目が立つようにすることで、米ソ双方が緊張を解いて引き下がるという危機管理のお手本のような解決策を得られました。

 一見、これで全て良かったかのように思えますが、マクナマラは言います。
  “I want to say, and this is very important. At the end, we lucked out.
  It was luck that prevented nuclear war.
  We came that close to nuclear war at the end.”
  「これは非常に重要だから言っておきたい。最終的には、我々はただ幸運だっただけなのだ。
  核戦争になるのを妨げることができたのは「幸運」だったのだ。
  実は核戦争に至るギリギリの淵まで我々は近くまで行っていたのだ。」

 と言うのも、1992年にマクナマラはキューバのカストロ国家評議会議長と懇談する機会を持ちますが、その際にカストロから、実はあのキューバ危機の時期に既にキューバ国内に核弾頭は持ち込まれており発射できる状態にあったのだと聞いて愕然とします。「そんなことは全くの初耳であり、真偽すら疑わしい。」、として会議の中止を提案します。代わりにカストロに3つの質問します。「貴方はキューバ国内に核弾頭が既にあったことを知っていたのか? もし知っていたとしたら、フルシチョフに米から攻撃を受けた場合は核を使うべきだと進言していたか?(※if節の後にwould have 過去分詞を使っているので、マクナマラはカストロが核弾頭の存在を知らなかっただろうという前提で聞いています。) そして、もしフルシチョフがその進言を受け入れ核兵器を使用していたとしたら、キューバがどんなことになったか分かるか?」と。これに対するカストロの回答は、「当時既に核弾頭があったのは知っていた。フルシチョフにはまさに使うべきだと進言した。もしキューバの核を使ったらキューバがどうなったかって、それは完全に壊滅させられていただろうと分かっていたよ。」でした。その懇談から更に10年以上経ったこの映画のインタビューを受けているこの時でさえ、マクナマラは暫し言葉を失っていました。そしてこう言います。
  “That's how close we were.”「そのくらい我々は核戦争の淵に近づいていたのだ。」 

 マクナマラはケネディ陣営の意思決定の輪の中にいた当時の経験と、当該危機から数十年経った後のキューバ訪問でのカストロ国家評議会議長との懇談などを通じて、以下のような教訓を得ています。
  “Kennedy was rational, Khrushchev was rational, Castro was rational.
  Rational individuals came that close to total destruction of their societies.
  And that danger exists today.”
  「ケネディもフルシチョフもカストロも合理的判断のできる指導者だった。
  しかし、そんな合理的判断のできる指導者達が彼らの社会の全面的破壊となる核戦争の淵のギリギリまで近寄ったのだ。
  そしてその危険は現在でも存在するのだ。」

 そして、こう教訓を結びます。
  “The major lesson of the Cuban Missile Crisis is this:
   The indefinite combination of human fallibility and nuclear weapons will destroy nations.
  Is it right and proper that
  today there are 7500 strategic offensive nuclear warheads,
  of which 2500 are on 15-minutes alert
  to be launched by the decision of one human being?”
  「キューバ・ミサイル危機の主要な教訓は、
  誤りを免れることができない人間の性質と核兵器の不確定な組み合わせは国々を破滅させかねないのだ、
  ということである。
  7500コもの戦略攻撃型核弾頭があり、そのうち2500コは15分待機の状態で、
  これらが一人の人間の決定で発射される態勢になっている。
  この状態が本当に「適正かつ適切」なのだろうか?ということなのだ。」
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 いやー、誠に含蓄のある教訓です。
 今日の状況で考えますと、トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩党委員長がそれぞれ核のボタンを握っているわけですから、背筋がゾクゾクどころか、身の毛もよだつ思いです。衝動的ないし偶発的な契機でそのボタンが押されることがないように祈るだけですね。  (了)

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