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2019/05/06

北朝鮮発射実験の続報: やはり弾道ミサイルだった?

  北朝鮮のミサイル「飛翔体」発射実験についての5月5日〜6日までのVOA続報をまとめました。
  北朝鮮側の官製報道や米国や韓国政府の反応が出ています。
  結論から言うと、やはり北朝鮮は短距離弾道ミサイルを発射実験したようですね。しかし米国トランプ大統領は今後の交渉の余地を残し、今回のことを重要視しないようです。
スクリーンショット (4)
スクリーンショット (5)
上下とも VOA 5月6日付記事「US downplayed North Korea missile launches」(https://www.voanews.com/a/us-downplays-north-korean-missile-launches/4904531.html)のビデオクリップより
(筆者注: ちなみにこの上の写真が問題の短距離弾道ミサイルです。下の写真が多連装ロケット発射機です。この新型短距離弾道ミサイルはロシアのイスカンダルミサイルのコピーのようですが、「弾道ミサイル」であることは間違いないようです。他方、下の多連装ロケットはソ連時代から共産国が好きな兵器で、精密誘導ではなくババババーンと数撃ちゃ当たる方式で地域全体を制圧するタイプのものです。日本も以前は多連装を持っていましたが今はありません。これは純・戦術的なものです。)

<ポイント要約>
  新しい情報として、
 - 北朝鮮政府は、今回は多連装ロケット発射機と戦術誘導兵器の発射実験であり、純「戦術的」なものだったのだとPR
 - 韓国政府は、無用の挑発であり南北合意違反だと公式に抗議
 - 米国政府は、発射実験の件を重要視せず、今後の交渉の余地を残した
 - 発射実験された「戦術誘導兵器」とは、やはり短距離弾道ミサイルだった模様

<VOA 5月5日付記事「North Korea confirms tests of “multiple rocket launchers” 」>
① 米国の報道各社は、北朝鮮の発射実験は「多連装ロケット発射機及び戦術誘導兵器」によるものであったことを土曜(5/4)に確認。
② 北朝鮮中央報道局は、今回の発射実験は金委員長自身の命令により北朝鮮沖の水域に向けて実施された旨を報じた。
③ 北朝鮮中央報道局は報道映像をリリースし、金委員長の発射実験の現場指導等の状況や今回の発射実験は純「戦術的」な目的のものであることをPR。
④ 韓国政府は、今回の発射実験は不必要な挑発であり、南北合意に反する旨の抗議のコメントを発出。
⑤ 北朝鮮政府のコメントには、明確な脅しはなく、米国にも韓国にも何ら言及がなかった。
⑥ 韓国政府が当初「ミサイル」と発表したものを後に「飛翔体」と修正した件について、ミドルブリー国際問題研究所の専門家ジェフリー・ルイス氏は「飛翔体などではなく短距離弾道ミサイル」と否定。同氏によれば、このミサイルは本年2月の北朝鮮の軍事パレードにも参加した短距離弾道ミサイルであり、ロシアの「イスカンダル」ミサイルによく似ている、とのこと。

<VOA 5月6日付記事「US downplayed North Korea missile launches」>
① 米国ポンペイオ国務長官は、北朝鮮の今回の飛翔体発射実験に対し、米国政府は重要視せず、引き続き朝鮮半島の非核化合意に向けた交渉の機会はある、と言明。
② 加えて同氏は、今回の飛翔体発射実験は全て短距離であり、いかなる国の上空も横断せず北朝鮮の水域に弾着していない、との見解を表明
③ トランプ大統領も、金委員長は北朝鮮の今後大きく経済成長する可能性を十分に認識しており、米朝会談時の約束を反古にしたり交渉を打ち切りにするつもりはなかろう、とツイッターにて表明。

<寸評>
◯ 新しい情報もありましたが、概ね前回の寸評内容の域を出ていないなと思いました。ちなみに前回の寸評は以下の通り。
* 韓国政府の「飛翔体」との表現訂正は、「弾道ミサイル」が焦点になると米朝交渉が断交するなどの問題が大きくなることを懸念したものと推測。韓国政府の国是たる対北宥和政策の一環ではないか
* 北朝鮮の金正恩委員長は、これまでの米朝首脳会談が首尾よく行かず、不満を表明したい一方、交渉の余地を残したいので、北朝鮮なりに十分抑制した挑発を発射実験で行なったつもり
* 他方、トランプ大統領は、北朝鮮問題に関しては忍耐と寛容を見せ、今後の交渉に余地を残す
* しかしながら、金委員長は十分抑制された挑発をしている認識かもしれないが、トランプ大統領との間で認識のギャップがある可能性を忘れるべきでない。事務方でしっかりと両者の認識ギャップを埋めるようunder the table での準備交渉に期待

◯ 動きがあったなと思ったのは、北朝鮮の純戦術的な発射だったんだよPR、韓国の北朝鮮への抗議、米国の重要視せず交渉に余地残す公式言明、そして、やはり弾道ミサイルじゃねぇかよ、という件です。
  北朝鮮は、「抑制された挑発」で計算づくのmeasured escalationのつもりだったので「純戦術的だったんだよPR」で裏打ちしたかったのでしょう。「弾道ミサイル」がクローズアップされるとモラトリアム違反を責められるので、焦りもあったのでしょう。もしかしたら、「挑発」色を薄めて、そもそも挑発ですらなく、本当の本当に戦術的だったんですよという必死のアピールなのかも。
  韓国政府の北朝鮮への抗議は、韓国内で文政権の対北宥和政策の行き詰まりが突き上げられ始めたので、政府としても公式に抗議せざるを得なくなったのでしょう。しかし、専ら国内向けの政治的PRの域を出ていませんね。決して外交的な本質的な抗議ではないですね。恐らく、この抗議一回ポッキリで、これ以上の抗議攻勢はとらないと思います。また、「弾道ミサイル」を「更なる分析が必要なので『飛翔体』と訂正」した件は、いつまで経ってもその分析結果は出ないでしょうね。もともとは、北朝鮮の発射実験が行われたことを察知した際に、短距離弾道ミサイルらしきものに加えて多連装ロケットらしきものも撃っていたことを知っていたのでしょう。韓国政府としては当初「弾道ミサイル」と発表したものの、それが国連安保理決議の制裁対象に当たるか当たらないかの議論になるであろうことを懸念したのではないでしょうか。従って、多連装ロケットも撃っているので、分析が必要とか飛翔体とか表現の訂正をしたのでしょうね。その訂正も含め韓国内メディアに突き上げられて、今回の抗議をしたのでしょう。
  米国政府の反応は、予期の通りでしたね。とりあえず今回までは重要な問題ではない(downplayという表現でした)と許容し、今後の交渉に余地を残しました。いやぁ、トランプ大統領、大人になりましたよね。
  最後に、専門家の見立てでは「やはり弾道ミサイルだったじゃないかよ」という件。ほら見たことか!って話ですね。
  今回は、トランプ大統領が許容してくれましたが、前回の寸評の通り、認識のギャップがあり得るので、「二度目、三度目はないぞ」ということを金委員長によく自覚してもらいたいですね。
  今後の米朝交渉に、特にunder the table での事務方の頑張りに期待します。
(了)

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