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2019/05/09

中東の過激派情勢

中東の過激派情勢

北朝鮮をめぐる話ばかり最近書いていてすみません。今回は、この領域の話も大事ですよ、というお話を一席。

VOAの「VOA Extremism Watch」というサービスをご存知ですか?世界のテロリストやイスラム原理主義者などの過激派をめぐる情報をまとめてお知らせしてくれるVOAのサービスがあります。VOAのホームページの一番下の欄のメールのマークをクリックするとVOA Extremism Watch とToday@VOA(その日のVOAのダイジェスト的なもの)の購読(subscribe)を登録をすると、無料で自分のメールアドレスにメールで配信されます。私は開拓してませんが、ツイッターとかインスタとかのサービスもあるようです。是非皆さまもどうぞ。
さて、5月7日付のVOAの過激派情勢の配信から、その概要をご紹介します。なにぶん平和な日本の良識ある一般市民の皆さんにとっては、ニュースバリューはあまりないかも知れませんね。でもね、へぇーそんなことが起きてるのか!というニュースが並んでいます。

◯ 2017年にサウジのモハメド皇太子が実権を掌握して以来、サウジでは人権抑圧が増大している模様。4月下旬には、テロ関連の罪状により1日で47名もの主としてシーア派の市民を死刑に処した。世界中の人権組織がこれを糾弾。
(2019年4/30付「Growing Concerns Over Saudi Arabia’s Rights Abuses」より)

◯ パキスタン軍は、5月初頭にパキスタンのパシュトゥーン族人権組織がアフガン及びインドの情報機関から資金援助を受けていると告発。しかし、その人権組織の代表によれば、
パキスタン軍は「テロとの戦い」が軍にとって儲け口になっており、人権運動について地域に混乱をばら撒いている、とVOAに反論。
(2019年5/6付「Pashteen: PTM Hurt Pakistan Military's Terror-Sponsoring Industry」より)

○ シリアの人権監視組織によれば、シリア北西部のイドリブ及びハマの隣接地域に対し、ロシアが100回を超える空爆を実施するなど、シリア政府軍とロシアが共同して主としてヌスラ戦線(※)に対する制圧作戦が増大している。(※筆者注: アルカイーダ関連組織)
(2019年5/3付「Military Escalation Continues in Northwest Syria」より)

○ ケネス・マッケンジー米中央軍司令官は、アフガニスタンに平和と安定が根付き、再びテロの温床になるなどということがなくなるまで、アフガンにおける多国籍軍に米軍のプレゼンスに何ら変化はない、と言明。また、米国とタリバンとの和平交渉についても楽観していると語った。
(2019年5/1付「Commander: No Decision on US Troops in Afghanistan」より)

○ イスラム国によって生まれた土地を蹂躙され、男性は虐殺され女性は性奴隷にされる悲劇を生んだヤジディ教徒。元の土地に返り、女性たちを元のヤジディの社会に受け入れることに決めたものの、ヤジディの宗教的及び共同体の規範から異教徒に凌辱された女性や生まれた子供たちを迎え入れることの混乱や論争をヤジディ教徒の共同体に巻き起こしている。
(2019年4/29付「Yazidis Divided Over Children Born of IS Rape」より)

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ヤジディ教徒の女性たち (2019年5/7付「VOA Extremist Watch」より)

<寸評>
○ サウジの人権抑圧という話は、やはりモハメド皇太子がキーパーソンでしたか。サウジ軍に知り合いがいますが、アラブ人には珍しく控えめ(大言壮語なく)で沈思黙考有言実行的な立派な男でした。他の中東国軍人からも、サウジは一目置かれる正統な経験イスラム教徒の国家という印象でした。ヨルダン軍の友人によれば、穏健な国に見えるが結構自国民に厳しい国だ、と言っていたのを思い出します。皇太子が実権を握ってから、皇太子なりの思い切った改革をしているのでしょうが、自国ではアラブの春のようなことが起こさせないように、反国家・反社会的勢力にはひどい目に会わせるのでしょうね。トランプ政権でなければ、米国政府も人権抑圧政策に対して厳しい注文を付けるのが普通ですが、ビジネスの相手として大統領と皇太子は仲がいいようなので、現米国政府は何も言いません。

○ パキスタンのパシュトゥーン族の人権団体の話は、さもありなん、と納得。テロとの戦いがパキスタン軍にとってドル箱事業なのかも知れません。パキスタン軍は抜け目のない軍ですが、100%信用できるか、というと難しいところがあって、米軍もウサマ・ビン・ラーデンの捜索・暗殺作戦の時に全くパキスタン軍を信用していませんでしたね。

○ シリア政府軍とロシアの共同戦線の話も、さもありなん、ですね。ロシアがシリアで活発に作戦をしているってのは、トランプ政権が昨年末に米軍のシリアからの撤退を言明し、400名ほどのプレゼンスを残す方向のようですが、いずれにせよ米軍が事実上同地を明け渡す形になったことに起因します。返す返すも、マチス国防長官が政権におればそんなことはさせなかった・・と残念なことです。まさにそれがトランプ大統領の目の上のたん瘤だったため、事実上の解任となったわけですが。トランプ=プーチン間で握っているのかも知れません。今後、ロシアのバックアップの下で、シリアはアサド政権がまた力で再統一するのでしょうね。

○ アフガンの話も、もとはと言えばトランプ大統領の昨年末のアフガンからの撤退言明から動揺が起きました。こちらの方は、米中央軍が一歩も退かない説明を国防省にしたのでしょう。大統領のご指導はいただくものの、再びこの地がISのような米国や同盟国にテロリストを輩出する巣窟にさせない、という軍の意志を示したのではないかと思います。アフガンはこの地の覇権を狙う大国はありません。ロシアも中国も、アフガンは手に余るのです。ここを押さえても手放してもお金にならないので、トランプ大統領は自分の指示とは違うことになったもののこだわってないのではないかと思います。

○ そして、ヤジディ教徒の件。重い問題ですね。もともと、イスラム教の一派ながら一般のシリアのイスラム教徒からも異端とか邪宗とか偏見を受け、歴史的に抑圧されてきた人々。イスラム国に蹂躙された際に、老いも若きも残虐に殺害され、女性は性奴隷にされ、生まれた子供たちもいる・・・。紛争の挙句、イスラム国から解放され、同地にヤジディの人々が返ってきましたが、悲劇の第二幕が起きているようです。人道的説明や理屈や理性で解決できない、ヤジディの民ならではの宗教的及び共同体の社会規範によって、割り切れない問題が表出。直面している問題が重いですね。

いかがでしょうか、中東過激派情勢。「へぇー」だったでしょ。

(了)

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