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2019/05/22

サウジ、イラン、トルコの関係を読み解くカギとは

 イランとサウジ間に緊張が続き、対イランの急先鋒の米国がペルシャ湾で臨戦態勢をとっており、「遂に戦争か?」と懸念される今日この頃。三国の歴史的経緯は中途半端ながら知っているつもりでいましたが、何で仲が悪いのかなど、そもそも本質的には分かっていませんでした。ところが、そのモヤモヤを解決する実によく分かる説明記事を見つけました。茂木 誠氏の日経ビジネス2018年11月1日付記事 「トルコvsサウジvsイランの三国志: サウジ建国の歴史と、英米介入が招いた対立 」)(https://business.nikkei.com/atcl/report/16/102900251/103000001/)です。
 ちなみに私のモヤモヤは、
*サウジとイランの対立の淵源は?スンニー派とシーア派の違いが対立?
*サウジと周辺アラブ国との関係が微妙なのはなぜ?
*サウジは米国と関係緊密なのに、ウサマ・ビン・ラデンはじめイスラム原理主義者にサウジ出身者が多いのは?
等です。
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サウジのムハンマド皇太子とトランプ大統領(2018年3月) 
(ウォールストリートジャーナル 2018 年 3 月 21 日 15:28 JST より) 


 記事の趣旨を踏まえつつ、私なりのアレンジとしてサウジの視点でまとめてみます。
<ポイント>
① 200数十年前、中東イスラム世界はオスマン帝国(トルコ)とペルシャ帝国(イラン)に席巻され、イスラム教を生んだアラブは被支配に置かれる
② ペルシャのイスラム教シーア派では正統カリフを継ぐのはペルシャ王朝の血統と信じ、シーア派こそ正統。アラブやトルコの大勢を占めるスンニー派から見れば片腹痛く、教義に忠実かどうかが正統性と認識。アラブに言わせりゃトルコも正統ではないのにカリフを名乗る。しかし、悔しいが力でかなわなかった。
③ スンニーの一派の法学者ワッハーブは異民族に支配されるアラブを嘆き、その原因はコーラン教義の軽視にあり、とアラビア半島の地方の豪族サウド家に説き、聖戦開始を決起させる。残虐かつ排他的に改宗か死を迫って領地を拡大、アラブを席巻。現在のサウジの基礎を作る。
④ ワッハーブ派の教義は現代で言えばイスラム原理主義者に近く、現在のサウジもワッハーブ派のコーランに忠実な教義で国を統治。他方、安全保障・外交に関しては現実路線であり、国家の生き残り策として湾岸危機・湾岸戦争以来米軍に基地を供与するなど米国と緊密。しかしそれが故に反発する若者も多く、過激派の温床の素地に。
⑤ オスマントルコはこのサウド家主導の排他的過激なワッハーブ派の聖戦に脅威を感じ、数次にわたり討伐。一方、英国も石油利権の確保のため、強いサウジを牽制し地中海からペルシャ湾岸の油田地帯に安全なルートを維持すべく、諸部族の国家建国を支援しサウジの周囲を小国で取り囲むとともにヨルダン・イラクを建国した。サウジからすれば、クウェート、カタール、バーレーン、イエメンなどの周囲の小国は英国の傀儡であり、かつ、ペルシャ湾を隔てたイランの影響を受けたシーア派も混在する地域であり、教義を軽視する俗化したヤツらに見える。折りあらば鉄槌を下す対象。かつ、油田はこのペルシャ湾地域にある。実はワッハーブ派100%と公称するサウジには、サウジ領内のペルシャ湾岸地域に隠れシーア派がおり、サウジにとっての財源である油田もこの地域にあるが故に、イランは絶対的な仇敵なのだ。
⑥ 以上のような経緯により、サウジにとって宗派的及び覇権の二つの意味での仇敵イランとトルコ、そして英国の油田権益をめぐる傀儡のサウジ周辺小国に囲まれ四面楚歌。生き残りを図るサウジ、ここに手を差し伸べたのがフランクリン・ルーズベルト時代の米国だった。ユダヤ系のロックフェラーの石油資本をバックにつけ、米国と親密に。米国にとっても、王政時代のイランに石油利権を多く有していたが、イラン革命で全て革命政府に没収された。この怨みは忘れ得ぬ。もって米国とサウジは敵の敵であり盟友。

<寸評>
◯ いやー、モヤモヤ解消しました。そうだったのか、と思わず膝を打ちました。
上記のような経緯が故に、サウジにとってイランは宗派的及び中東や石油をめぐる覇権の故に、不倶戴天の仇敵。対イランでは米国と一蓮托生で徹底的に戦うわけですね。加えて、サウジがイスラエルに対して穏健路線を取っていた所以は、これも米国との緊密にあったわけですね。
  他方、トルコは過去何度もワッハーブ派サウド家を潰しに討伐軍を送ってきた敵。聖戦で戦った敵ですから絶対に友人になれないのでしょう。トルコも「サウジ許すまじ」と思ってますから、カショーギ氏暗殺事件の時の執拗な情報戦とマスコミを味方につけた暴露戦法を敢行したわけですね。
  更に、なぜサウジがイスラム原理主義者の温床になったか、その所以はサウジのワッハーブ派という国家的宗派の教義に存し、なおかつ国家が生き残りのため米国と緊密化し現実的政策を取るというワッハーブの教義とは矛盾することに直面した純粋なワッハーブ主義者達が国内に多く存することにあったのですね。

  勿論、記事を書いた茂木氏の見立てすぎないのかも知れませんが、この複雑な中東情勢理解する上で非常に分かり易いご説明でした。お時間あらば、ぜひご一読を。

(了)


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