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2019/06/04

米中国防相の会談は物別れに

  2019年5月31日シンガポールで行われたASEAN国防相会議の幕間に、米シャナハン国防長官代行と中国の魏鳳和国防大臣が会談し、メディアの注目を集めました。
  VOA 6月1日付記事「US, China defense leaders meet amid increased tensions (米中国防トップ、緊張下で会談)」の概要です。
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In this April 21, 2017, file photo, Chinese structures and an airstrip on the man-made Subi Reef at the Spratly group of islands in the South China Sea are seen from a Philippine Air Force C-130. CSIS AMTI via DigitalGlobe, File (Philstar.com 2018年5月3日付「China's missile system on Philippine-claimed reefs a step closer to airspace control」 より ) (https://www.philstar.com/headlines/2018/05/03/1811793/chinas-missile-system-philippine-claimed-reefs-step-closer-airspace-control)

<ポイント>
① 米シャナハン国防長官代行と中国魏国防相は、米中の偶発的な軍事衝突を回避するための枠組み等、軍事協力について建設的に取り組む一方、それぞれの主張を交わした。
② シャナハン長官代行は、米中の軍事協力について建設的に取り組む一方、中国の南シナ海でのあからさまな覇権行為について苦言を呈した。「中国は防衛的性格と説明するがいささか過剰( it's a bit overkill.)である。」
② 魏国防相は、南シナ海での中国の取り組みはあくまで防衛的性格のものであり、中国からの先制的な行動は一切ない旨を強調した。

<寸評>
◯ 南シナ海の係争中の島々での中国の軍事拠点化については、中国が言うようなシロモノではありません。中国は、このブログ冒頭の写真(フィリピン空軍の輸送機C-130から撮影)=南沙群島のスービ岩礁のように、岩礁を埋め立てて人工島化し、軍事施設や滑走路を設置しています。更に、逐次に拠点化は進められ、地対空ミサイルが装備され、中国空軍の輸送機のみならず、戦闘機、支援戦闘機、早期警戒機、等々の作戦機が離発着できる滑走路の延伸がなされています。もはや、明白な事実として軍事要塞化しているわけで、シャナハン国防長官代行が「overkill(過剰)」と言ったのも言い過ぎではありません。

◯ しかし、中国の魏国防相は、(日本のメディアにも報道されていましたが、)会議でも記者会見でも自国の立場を強硬に擁護するタカ派的発言が目立ちました。南シナ海問題も台湾問題も、いずれも自国の領域・領土の問題であって、特に台湾について全てを犠牲にしてでも自国の一部として不可分である、と一歩も引かない姿勢を示したようです。更に、記者会見の場で、記者から天安門事件について質問された際、一国の国防相の発言とは思えない、一昔前の独裁国家のよう態度で次のように言いました。
  「軍の行動は正しかった。国家の危機を人民解放軍が救った。軍が外国勢力からそそのかされた暴徒の反国家的行動をコントロールした。」
  こういう場で馬脚を現すってことですね。まだまだ中国は垢が抜けていない。およそ国際的な場に出る高官には、メディア対応の訓練ぐらいしっかりやっておくべきでしたね。これじゃただの田舎オヤジ。国際的な会議に参加をする一国の高官たる者は、同じ趣旨のことを言うにしても、メディアを通じて世界に発信されることを考えて、バランスのとれた抑制的なコメントができなければ。

◯ ただ、情状酌量の余地があって、それは昨年のこの拡大ASEAN 国防相会議に中国は出席しておらず、そこで当時のマチス米国防長官に南シナ海問題について中国の覇権行為が糾弾された経緯がありました 。マチス国防長官は、中国の南シナ海の軍事拠点化が続く場合、「必要なら断固とした措置をとる」とまで発言し、中国に気兼ねして及び腰だったASEAN各国の溜飲を下げたのです。前年にそんなことがあったこの会議に数年ぶりに参加する中国としては、出席する魏国防相に対し、「一矢報いよ」と相当ネジを巻いたのではないでしょうか。ネジを巻かれたボルテージの高さのままに、いかにも冷戦時代の社会主義国家のタカ派将軍が言いそうなガチガチの発言になったと言うのが背景だろうと推察します。

◯ 当面、この正面の動向に注視が必要なようです。

(了)

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