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2019/07/17

イランへの欧州の一途な努力


  当ブログの7月10日付「イラン問題で欧州が緊急会議」の続報です。相変わらず英仏独をはじめとする欧州諸国は、イランを核合意に復帰させるために一途な努力を続けています。VOA記事2019年7月15日付「EU Announces Strides in Iran Trade Mechanism Amid Nuclear Deal Scramble」のポイントは以下の通りです。
ナタンツ
2008年4月、イラン中部のウラン濃縮施設で遠心分離器を視察するアフマドネジャド・イラン大統領(当時)
「USBでウイルス感染 イラン核施設攻撃の手口」(毎日新聞経済プレミア 2018年7月26日 松原実穂子 / NTTチーフ・サイバーセキュリティ・ストラテジスト: https://mainichi.jp/premier/business/articles/20180724/biz/00m/010/002000c より)

<ポイント>
① EUは米国とイランの緊張緩和に努力中のところ、米国によるイランへの制裁に対する負担軽減策INSTEX(主として人道的必需品を対象としたイランとのバーター貿易を可能にする制度)について、今後は第3国にも門戸開放する予定であり、更にこの制度に原油も含められないかを検討中である旨、明らかにした。

② 欧州各国の外相級高官は期待感を述べる。
  英国のジェレミー・ハント外務長官:「イランの核兵器保有まで急いでも1年の猶予はあり、まだ核合意体制に復帰する可能性はある。」
  フランスのイアン-イブス・ラドリアン外相:「米国の核合意からの離脱という間違った決定、及びそれに起因するイランの核濃縮の核合意上限破りという間違った決定、そのいずれも非難する。欧州は一体でいなければならない。」

③ 他方イラン側は、欧州は米国の強硬な制裁による負担を十分に補償していない、と主張。また、専門家もINSTEXのインパクトについて懐疑的な見解。

④ それでもEUの外交政策主任のモーゲリーニ女史は、INSTEXは欧州が当初期待した以上にメカニズムが複雑であり、十分な効果は挙げていないかもしれないが、「それでも欧州はイランに対して最善を尽くす。このことがイランの世論に訴え、政権を感化し、核合意の枠内に完全復帰することを望んでいる。核合意締結国は、イランの重大な合意不履行もイランの核合意復帰への動きも、いずれも未だ確認していない。イランは、イランの核開発は平和利用であることを終始主張している。」と希望を捨てていない。

<私見ながら>
◯ 欧州のイランをかばう一途なまでのめげない努力は、誠に立派。賞賛に値すると思います。一体、そこまでする原動力は何なのかと、不思議なくらいです。他方、イランへの同情心からか、イラン寄りな希望的観測や平和主義者的な宥和政策志向が見え隠れする思いを持たざるを得ません。
  私見ながら、欧州の外相級高官の皆さんはいささか能天気に過ぎる。自国の国家やEUという諸国の共同体の外交を担っているのだから、現実主義の視点は外相級の必須の資質ではなかろうか?と余計なお世話を焼きたくなります。
  EU外交政策主任モーゲリーニ女史曰く、「イランが主張する通りイランの核開発は平和利用である、欧州の最善を尽くす姿勢がイランを合意への復帰へと動かす・・・。」
  英国のハント外務長官曰く、「イランの核兵器保有まで急いでもあと1年の猶予があり、まだ核合意体制に復帰する可能性はある・・・。」
  この方々は能天気過ぎますよ。例えばイランの核開発、平和利用ならなぜ「高濃縮するぞ!」と脅すのでしょうか?高濃縮が何を意味するのか一番知っているのはイランでしょうね。イランが技術的に80%まで可能と言及していますが、そんな高濃縮ウランは核兵器にしか用途はないですよ。平和利用なら核合意で上限とされた3.67%で十分なのです。平和利用なら300kgという上限で十分なのです。明らかに、イランは核開発技術を外交カードに使うという「火遊び」を始めたわけです。
  そのイランの企図、核兵器開発をチラつかせて西側の譲歩を得ようという危険な瀬戸際外交のハラを読んだ上で、現実的な交渉をしないといけません。

◯ 一方、今回のイラン情勢の緊迫化は、間違いなく米国トランプ大統領の一方的な核合意離脱と一方的な経済制裁によるものです。緊張の緩和の緒ためには、この問題の核心、トランプの石頭を柔らかくしなければなりません。問題の解決、緊張の緩和には、イランだけでなく米国に対しても、両者へのアプローチが必要です。アプローチには、外交による米国-イラン双方の核合意復帰を目指した政治・経済的な交渉が大事。更にもう一つ、ペルシャ湾-ホルムズ海峡の商船航行の安全確保という物理的な安全保障の問題の解決もお忘れなく。
  今の日本の立ち位置で、イラン-米国双方の首脳と直接フランクに話せる首脳を有し、緊迫するホルムズ海峡の海上作戦の国際的な協調態勢をリードできると思います。二の足踏まずに、是非踏み込んでもらいたい。
  あれ?能天気は私の方ですか?

  (了)

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