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2019/07/29

英国独自でホルムズ護衛開始!さて日本は?



米国のホルムズ海峡有志連合への参加呼びかけを受け、日本としては只今検討中 。そんな折も折、英国は独自の英国商船の護衛を開始しました。(VOA記事 2019年7月25日付「 Britain Begins Escorting All UK Vessels Through Strait of Hormuz」)
他方、日本の対応について、金沢工業大学虎ノ門大学院教授・元海将の伊藤俊幸氏はFNN PRIME(2019年7月27日付、https://www.fnn.jp/posts/00047434HDK/201907271200_ToshiyukiIto_HDKより)「日本はすでに『有志連合』に参加している 米側の次なる要求はパトロール増強と商船護衛」にて表題通りの持論を展開しています。
これらを踏まえて、私見を述べたいと思います。

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英国籍商船を護衛する英海軍艦FILE - Britain'sHMS Montrose escorts a ship off the coast of Cyprus in February 2014. Britain has started sending a warship to accompany all British-flagged vessels through the Strait of Hormuz; the Montrose was the first to do so, on July 24, 2019.
(VOA記事2019年7月25日付「Britain Begins Escorting All UK Vessels Through Strait of Hormuz」より)



<ポイント>
VOA記事のポイントは以下の2点
① 英国は2019年7月25日(木)から、ホルムズ海峡にフリゲート艦モンテローズを派遣し、英国船籍の商船を直接護衛する作戦を開始した。これまで英国は直接護衛をするのは実行可能性から困難と主張していた。しかし、この政策の転換はボリス・ジョンソン新首相のイニシアチブということではなく、既定の計画だった模様。

② 英国の貿易所掌官庁や貿易・商船関係者からは高評価。他方、護衛作戦を実施しても、イラン革命防衛隊の商船の航路妨害や拿捕を抑止出来ず、交戦に至ることも十分考えられる。課題は交戦規定、と英国海兵隊出身の専門家は指摘。

伊藤元海将のご指摘は以下の3点
③ まず事実認識として誤解のないように。我が国が実施中の海賊対処行動は、既に米国の主張する有志連合の一部(CTF151:海賊対処行動)に参加している。また、米国が提唱する有志連合(coalitions)とは、各国それぞれの参加形態であり、指揮官も各国軍持ち回りという自主的かつ自由度の高い合同部隊である。多国籍軍とは違う。

④ 米国の今回の有志連合の構想は、既存の有志連合(CTF-152)を拡大・増強して、作戦地域をペルシャ湾〜ホルムズ海峡から更にバブエルマンデブ海峡海域まで延長し、米海軍は海域全般を警戒監視し、各国海軍が商船護衛をするイメージ。

⑤ 我が国としては、海賊対処行動の護衛艦の任務の付加、哨戒機の警戒監視情報の提供で貢献可能。法的には、正当防衛・緊急避難に加え、「近接阻止射撃」や「武器等防護」が可能なよう法的整理が課題。また、政治・外交上では、米国及びイランとの関係維持のため自衛隊の有志連合参加のあり方をどのようにするかが課題。

<私見ながら>
◯ 英国の英国籍商船の護衛作戦開始は、必要に迫られたこともありますが、国家として決然たる政策を断行しており立派です。悲しいかな、この国家としての決然たる態度が、今のところ我が国政府には見られない。

◯ 伊藤元海将のお説ご尤もですが、私見ながら反論が2点あります。
まず第一は、日本は既に有志連合(CTF152)に参加しているのか?=今回の米国提唱の有志連合が、既存のCTF152の増強(+各国の商船護衛作戦)という枠組みなのか?という問題。中東湾岸地域で米軍がここ十数年実施中のCTFという枠組みの作戦について、一般の方々にはあまり知られていない話ですから、それを説明してくださるのは良いのですが、同氏は本質論として今回の米軍の言う有志連合が=CTF152の拡大版である、と仰っている模様。私には異論があります。ダンフォース統合参謀議長はCTF152を前提にはされていないのではないかと思います。今回の作戦が、対イラン連合ではなく、あくまで商船護衛のための新しい概念のcoalitionなのだ、と説明していると私は解釈しています。CTF152の拡大版であるなら、CTF152に既に英、伊、豪、サウジ、バハレーン、ヨルダン、カタール、クウェート、UAEが参加しているので、既存の枠組みの拡大だと説明した方が話が通り易いと思います。そうは説明しておらず、ポンペイオ国務長官は「海洋安全保障構想を新たに提唱する。今その計画の初期段階であり、是非とも参加国を募る」と言っているわけですから。違いますよ、これは新規coalitionでしょう。それが証拠に、英国は商船護衛作戦を開始しましたが、米国提唱の有志連合に参加とは言ってませんよね。CTF152拡大版説であれば、英国は米国提唱の有志連合に既に参加中であり、かつ、今回そのCTF152の各国枠組みの商船護衛に参加していることになります。やはり別物ですよ。

◯ 第2に決定的な問題として、基本的に米国提唱作戦への参加とイランとの良好な関係維持は両立できるか?という問題。米国の有志連合の旗の下で海自艦艇を派遣したら、イランにとっては「敵」側についたと理解されます。両立はできませんよ。同氏は、米国提唱の作戦に参加することとイランと日本の良好な関係維持という問題を「どう扱うか」という程度のご認識をされておられますが、いかがなものかと首を傾げます。やり方によっては両立する、とお考えのようですが、基本的には両立は無理ですって。

◯ ただし、最終的な日本政府の方針として、イランに敵視されるわけにはいかないが、米国の考えを無碍にはできない、という政治的判断は十分考えられます。先程伊藤氏の持論を批判しておいて、私自身も自己矛盾になりますが、以下の3点を三立させねばならないのが我が国の命題だと思います。①米国に配慮していずれかの形で有志連合に参加するし、②日本関連船舶の護衛=安全確保は我が国のエネルギー安保の問題であり必須、その一方、③イランとの良好な関係維持も我が国のエネルギー安保上必須の問題、この三方両立が求められています。
  手前味噌ながら、私の持論を言わせていただきます。(ここ最近の過去ログも参照ください。)日本としては、主たる力は英国提唱の欧州海軍部隊に海自護衛艦を参加させてホルムズ海峡の安全確保と緊張緩和に運用し、従たる力で米国提唱の有志連合に海自海賊対処部隊の哨戒機によりバブエルマンデブ海峡海域の警戒監視情報の提供という形で協力すること、だと思います。恐らく米国は不満でしょう。米国とも協調するものの、イランとはことを構えず、自国関連船舶を守る。じゃあ、どっちにつくのだ?と問われれば、「少なくとも米軍主導の有志連合の旗の下で海自艦艇は派遣しない」ことは明確にすべきです。それでは海域の軍事的緊張を高めるだけです。筋は立てるべきだと思います。今回の危機をもたらしたのは米国自身ですから、筋を通すところは国家として決然たる態度を示すべきではないでしょうか?
  英国と歩調を合わせましょうよ。英国だって、日本と同様、米国とは特別な関係にある。しかし、元の核合意体制に回帰しようという考えをイランに対しても言い、米国とは協調しつつも米国主導の有志連合には加担せず、他方で自国船籍への航海の安全確保は自らの海軍艦艇で確保する、英国は英国としての正論を貫いているのではありませんか。

  (了)


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