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2019/08/12

ホルムズ商船護衛は独自路線で行きましょう!

英は有志連合参加へ、日本は独自派遣追求を!

  2019年8月5日、英国は独自路線から米国主導の有志連合傘下へ舵を切りました。7日にはエスパー米国防長官が来日し、安倍首相や岩谷防衛相と会談、有志連合への参加を迫っています。さて、日本はどうすべきでしょうか?英国同様、米国主導の有志連合に加わりますか?それとも、独自の商船護衛に活路を求めますか?或いは、当面は決心せずに状況を見極めますか?

  結論から言うと、あるべき姿は「独自の商船護衛の部隊派遣、合わせて米国主導の有志連合との情報共有により(参加せずとも)連携を図る。もって、イランとの決裂を避けつつ、米国のイニシアチブのメンツを立て、海域の日本関連商船の安全確保及び地域の緊張緩和に努める。」です。有志連合へ情報提供の形で協力をしたとして、それでも日本は独自路線を取ることでhonest brokerとしての立ち位置を確保し、米国とイランを決裂させずに緊張緩和に舵をとらせる方策もあると思います。
以下、まず状況の整理をし、次いで私見を述べたいと思います。
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日本関連船舶を護衛中の海自艦艇(海上自衛隊オフィシャルサイトより)

<状況の整理>
① 2019年7月31日、米国は関係諸国に対し3回目の有志連合説明会を実施したが、その時点で米国主導の有志連合にいずれの国も参加せず。(参加表明が報じられた韓国の動向は不明。)

② 各国とも米国主導の有志連合への参加に踏み切れずない模様。英仏独は米国枠組みには参加表明せず慎重姿勢を維持、英印は独自の自国籍商船護衛のため海軍艦艇を派遣。

③ ところが、その英国が方向転換、2019年8月5日に米国主導の有志連合への参加を表明。独自路線や欧州海軍部隊による商船護衛も模索したが、米国の協力なしには当該海域での不法な脅威から商船の安全確保することは困難との判断。他方で、英国は引き続きイランの核合意維持を追求し緊張緩和に努める旨、表明した。

④ 8月7日(水)、エスパー米国防長官が来日し、まず安倍首相、次いで岩谷防衛相と会談。安倍首相には直接の言及はしなかったものの、岩谷防衛相には米主導有志連合への日本の参加を要請。加えて、韓国との安全保障に係る情報共有体制(GSOMIA)について、緊張する日韓関係に関連して韓国側が破棄する意向を示している件で、存続への努力を要請した模様。岩谷防衛相は記者からコメントを求められ、日本の立場を理解してくれたものと受け止める旨、回答。

⑤ エスパー米国防長官の来日後、日本政府の検討状況も俄かに動きが見られた。8月8日(木)〜9日(金)、各種報道あり。有志連合参加?、独自派遣?海自艦艇派遣?等というものから、現在実施中の海自の海賊対処部隊によるバブエルマンデブ海峡海域の警戒監視による貢献案など様々。

⑥ 関連情報として、8月8日(木)、ロシアのボリャンスキー国連次席大使は、米国に対抗して独自の中東安全保障スキームを提唱。イラン含むペルシャ湾岸諸国やロシア、中国、米国等の安全保障機構を目指すというもの。グテーレス国連事務総長ほかに働きかける。

<私見ながら>
◯ ニュースに振り回されず、本質に立ち返るべし
今直面している事態は、日本の経済を支える一つの柱である重要な海上交通ルート=ホルムズ海峡で、商船の安全航行が脅かされていること。脅威の有力な一部がイラン革命防衛隊による臨検・拿捕、他に正体不明の攻撃者。この海域における日本関連船舶の安全航行の確保が問題の焦点です。何とかしなければならないのです。実効性のある商船護衛と警戒監視の措置が命題です。
  この命題の対応にあたっての課題は、①米国主導の有志連合の参加の要否、②イランとの対峙を避けた関係の維持、の二つです。①は一つのオプションに過ぎない一方、非常に効果があることは明白であり、日本にとって米国との同盟関係や外交姿勢における協調は非常に重要なため、無碍に参加要請を拒否しづらい、という特性があります。他方、②は日本にとってのエネルギー安保上の必須の考慮事項であり、また、世界にとってもイランを戦争に追い込むことは絶対に避けるべきことです。総じると、本質=命題である「日本関連船舶を守る」ことを如何に具体化するか、その際に2つの課題をどうクリアするか、を考えることが肝要です。

○ 行動はとらない、というオプション
  いずれの形でも自衛隊を派遣するような行動をせず、「まず外交交渉を尽くす」というオプションがあります。理論的には「あり」です。しかし、「まず」が他の手段方策を一切取らず、外交に専念することを意味するのなら馬鹿野郎ですね。ハッキリ言って無力。大体、外交でどうにもならないからこうなったのであって、日本外交に如何なる秘策があるのでしょうか。外交交渉を継続することは大事ですが、「まず」ではなく「合わせて」が適切だと思います。安全航行のための商船護衛対策・行動を取りつつ、「合わせて」外交努力をするというのが実効性ある方策です。肝心なのは、それが商船護衛に実効性があるのか?ということだと思います。
  NO/「行動はとらない」というオプションはないと思っています。ただ、情勢を見極める/慎重に検討する、という大義名分のもと、今決心をせず先延ばしにするという手はあります。ただし、「検討中」という理由で何もなさず時を費やし、国際社会にも日本の商船にも結局は何の役にも立たないことも、NO というオプションと変わりがありません。逃げずに問題の解決の検討をすることが肝心でしょう。

○ 米国主導の有志連合参加というオプション。
  米国は米国主導の有志連合による警戒監視・商船護衛を提唱しています。これに加わるのも一つのオプションではあります。米国の圧倒的な情報力と軍事力の下、情報収集・警戒監視・直接エスコートを多国籍の連合部隊で展開する有志連合に参加すれば、緊急事態への対応については強力な助っ人が期待できますし、日本関連船舶にとっても物理的に安全確保する有力なオプションでしょう。英国が独自路線を追求したものの、結局は米国の有志連合に参加したのも、ここに集約しています。この海域は今、極度の軍事的緊張下にあります。砂漠の大地の間に横たわるペルシャ湾筋の深い入り江は、一見のどかなベタ凪の海ですが、艦艇や航空機等の目に見える作戦(overt operation)と電波探知・電子情報はじめ情報戦や特殊部隊等の見えない作戦(covert operation)が、イランと米国の間で既に展開中なのです。ここに、片やイランと相互に拿捕した船の問題を抱えてイランと係争中の英国が独自路線で自国商戦を護衛できるか?米国は英国に、独自路線なら米軍の情報を提供しない、と協力を拒んだのではないかと推察します。他方で、かねてからトランプ米大統領とツーカーのジョンソン英新首相に政権が移行した折も折、ジョンソン首相が米国との協調路線に舵を切ったのでしょう。ですから、日本も独自路線を追求する場合のネックは、米国が独自路線なら米軍の情報は提供しないし、イランによる商船拿捕に瀕するような緊急時にも協力はできない、と米国に柔らかく恫喝されることは覚悟しなければなりません。
  では、なぜ有志連合への参加国は一向に集まらないのでしょうか?各国が米国枠組みに参加することを避けているのは、間違いなく有力な産油国であり、かつ、有力な原油輸入元ペルシャ湾のチョークポイントを握るイランとの関係維持を慮っているのです。しかも今回の危機は、そもそも米国が作り出した危機だということは周知の事実。さすがに米国が「この指とまれ!」と天高らかに指を差し出しても、どの国も止まれません。
  想像してみてください。日本が有志連合に参加すると発表したら、それはもはやイランとの最後通牒になってしまいます。これまで米国の指に止まらなかった諸国も、日英の参加により、「バスに乗り遅れるな」状態になり、追加参加してくるかもしれません。イランから見れば、有志連合自体が対イラン包囲網のように映り、ただでさえ緊張している海域は、もはや「イラン」対「米国主導の有志連合」という一触即発の軍事的緊張下に陥ることは必定です。イランにとって、自国の目の前の海に全て敵となってしまった外国海軍の船影ばかりが見えたら、・・・・。そんな時には、イランは海峡封鎖を宣言し、もって対イラン戦争の始まりになるやもしれません。

○ 独自路線というオプション
  「有志連合には参加せず、日本独自に日本関連船舶を護衛する」とは、具体的にどういうイメージか?望ましくは、上空から海自哨戒機が海域全体を警戒監視する中、海自艦艇に随伴護衛された日本関連船舶が海域を通過する、というのが基本パターンです。しかし、日本関連船舶の航行は東から西へ(ペルシャ湾奥へ)のもあれば西から東へ(ペルシャ湾からインド洋・太平洋に出る)ものも、随時ひっきりなしに航行しています。海自の艦艇も哨戒機も数に限りがあり、入港・給油等のインターバルも必須です。これに対し、ソマリア・アデン湾海賊対処の際の初期の対応を例にとると、商船護衛のスケジュールを予め公表し、これにエントリー(参加申し込み)してもらい、登録船舶には安全な起点と終点を示し、そこで集合・解散とする、というやり方をしました。よって、スケジュールに合わない船舶は、スケジュールを待つか、待たずに独自に前進するか、になります。この際、参加船舶は日本関連船舶としつつも、いずこの船舶であれエントリーしたければ護衛可能な範囲で門戸を開放していました。当時、護衛艦2隻で前後を挟み、間に商戦を2列に10隻の計20隻くらいを並べ、東向き護衛が終了したら補給艦から洋上で補給を受け、次の西向き護衛へ。その護衛間に補給艦は安定した近隣国の港で補給をし、護衛の数往復の後、インターバルのためジブチに入港、補給・休養の後、また次の護衛任務へ。かなりハードな任務を終え、4ケ月交代?くらいで次の対処部隊と交代で派遣されていました。この間、ジブチを基地に持つ海自哨戒機は、護衛任務を中心に、海域全体を見渡しながら往復飛行をし、この海域の既に掌握済みの各国商船の確認や、事前の航行情報にない不審船舶を発見すればその情報を、航行中の商船や各国海軍が傍受している国際周波数で通報することにより、情報共有をはかりました。この情報を基に、近隣をパトロール中の海軍艦艇が相互に助け合いで対応したりしていました。
  海賊対処は、相手が「海賊」であったため、この各国間の共通の敵として協力体制がありましたが、今回は「イラン革命防衛隊」がからんでいるだけに、国家の主権を背に「止まれ!」と言ってくるわけですから、対応が難しいわけです。
  他方で、独自路線のいいところは、日本丸出しのあからさまな個別の行動ができることです。全船にあの分かり易い国旗を旗めかせて「日本でーす」と日本の軍艦旗を掲げた海自艦艇が護衛するのです。決め手は、予めイランに「何月何日、日本国海上自衛隊がA点からB点まで日本関連船舶を護衛しまーす。イラン沖の国際航路をイランにも掌握してもらいながら、合法適切安全に通過します。何か不都合やお問い合わせがあったら、海自が対応しますから。それでは、よろしくお願いしまーす。」と仁義を切る。いかがですか。在イラン大使館に海自の連絡将校(Liaison officer)を置き、イランとも密接に連絡を取る。日本とイランの良好な国際関係をバックにしてこうしたイランとの協調路線を取れば、日本関連船舶の安全航行は確たるものとなるはずです。イランもこうしたイランを一人前の国家として対等に遇し、敬意を払う国を求めていると思います。
 こうして、緊張下のホルムズ海峡でも、調和された安全航行という例を積み重ねれば、海域の緊張緩和の一助になろうと思いますし、イランにとって、日本は信頼できる正直な仲介者(honest broker)としての地位役割を確保できるのではないでしょうか。こうなって初めて、日本としての地位役割を踏まえた実効性のある外交努力ができるのではないでしょうか。
 ここで問題は、米国との関係です。米国にしてみれば、米国の提唱した有志連合への参加要請を袖にして、勝手にイランのご機嫌を伺って、自国だけ漁夫の利を得るつもりか?といぶかられても不思議はありません。有志連合に入らない代わりに、米国にとってもう一つの正面であるバブエルマンデブ海峡において、同地近傍で作戦中の海自哨戒機による警戒監視情報を提供する、という手はあります。海賊対処部隊の作戦地域を、バブエルマンデブ海峡海域まで拡大することで、実施している内容は海賊対処と同様に海域の警戒監視情報の提供ですから、必要性も可能性も成り立つと思います。米国には、バブエルマンデブ海峡正面で情報提供という形で有志連合には協力する、という手です。これでは有志連合参加ではないので、米国の満足は得られないかもしれません。しかし、もともと両立は無理なので、米国の満足は得られなくても「ウム、これでいいのだ」とバカボンのパパのような達観をしましょうよ。ここは大義のない米国の対イラン包囲網には入らず、独自路線で行きましょう。

(了)


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