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2019/10/16

トルコのシリア侵攻: クルドの叫び「米国は道義的責任を!」

トルコのシリア侵攻: クルドの叫び「米国は道義的責任を!」

 トルコ軍がシリア国境を越境してクルド人勢力に対する侵攻作戦を開始、クルド人が「テロリスト」として殺戮されている問題が波紋を呼んでいます。国連、西側諸国のみならず、ロシアやイランまでトルコに自制を求める中、トルコは強硬姿勢を崩しません。
そんな中、当のクルド人は悲痛な叫びをあげています。「米国は道義的責任を果たせ!」と。
 2019年10月12日付VOA記事「Syria Kurds Urge US to Assume 'Moral Obligations' as Turkey Attacks」にそんな記事が生々しく報じられています。

afp_sdf.jpg
Members of the Kurdish-led Syrian Democratic Forces (SDF) are pictured during preparations to join the front against Turkish forces, near the northern Syrian town of Hasakeh, Oct. 10, 2019.(2019年10月14日付VOA記事「Kurds Strike Deal with Syrian Army to Counter Turkey」より)

<状況>
① クルド人勢力主導のシリア民主部隊は、「米国は、トルコの越境侵攻から我々を守るという道義的責任を果たせ!」と声明。
曰く「我々の盟友である米軍は、我々を保護すると保証していたにも関わらず、突然予告なく不正義にもトルコとの国境地域から撤退し、我々を見捨てた。米国よ、道義的責任を果たせ!防空態勢をとってトルコの航空機を締め出せ!」

② 他方、トランプ米大統領にとっては、自身の米軍撤退の判断がトルコにシリア侵攻の青信号を灯した形となった。大統領は10月10日、トルコ政府に対して政策を強硬化するとともに、更なる侵攻が進むようなら制裁措置を講じることを明らかにした。

③ このトランプ米大統領の発言に対し、クルド勢力主導のシリア民主防衛部隊の見方は至って冷ややか。トルコの侵攻を妨げる効果はないだろうと見ている。これまでのトルコの航空攻撃と野戦砲の砲撃で、シリア市民28名、シリア民主防衛部隊74名の犠牲者が出ており、国連の見解では10万人の避難民が出ている模様。

<私見ながら>
◯  トランプ米大統領の10月10日のトルコへの制裁発言は、それ自体がこの問題を軽視している証左ですね。要するに、「もうその辺で止めとけ!これ以上侵攻するなら制裁課すぞ!」という論理。そもそも「更なる侵攻」に対してですから、これまでの越境侵攻は許容している、としか読めません。

◯ 2019年10月15日付の日経新聞記事「米、トルコに経済制裁へ シリア侵攻で対抗措置」によれば、
トランプ米大統領は10月14日、トルコへの経済制裁を発表。トルコのシリア侵攻を「戦争犯罪」とまで言及し、シリア難民の強制送還に関わった政府関係者を制裁対象に指定、トルコ製鉄鋼への関税倍増(25%から50%へ)などを決めたようです。もってトルコへの経済制裁により、トルコの自制を促すものです。

◯ さすがのトランプ大統領も、マスコミや政敵にトルコのシリア侵攻に青信号を灯した責任を問われ、対トルコ政策を修正してきましたね。「厳しい制裁」をPRしたようですが、その効果がいかばかりかは未知数です。なぜなら、トルコのエルドアン大統領もかなり頑なになっているようで、容易に引き下がらない姿勢を見せています。
その意味では、私の読みもハズレました。イランにとって、国内の反政府勢力であるクルド人とシリア内戦でトルコに流入してきた何百万人もの大量の難民、更に1万名ものISの残党(クルド勢力のIS収容所にいた)、シリア側へ押し返したいというのがトルコの国民世論です。しかし、西側諸国やロシア、イランにまで侵攻中止を求められたエルドアン大統領は、「今回の侵攻で一定の成果を得た」と位置付けて早晩撤退するだろう、と推察していましたが、エルドアン大統領は国際世論に対して一歩も引かない姿勢を見せています。最近の大統領の反論では、欧州諸国に対して、「それならトルコが国内に受け入れている中東からの難民を欧州に流出するぞ!」とまで豪語しています。

◯ トルコの侵攻に対して、シリアのアサド政権の政府軍もやってきました。益々混迷を深める中東情勢、可哀想なのはクルド人達でしょう。彼らの悲痛な叫びに耳を傾けねばなりません。

(了)


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