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2019/11/03

焦れる北鮮、トランプは塩対応

焦れる北鮮、トランプは塩対応

 2019年10月31日(木)、北朝鮮はまたもミサイル発射。これに対し、相変わらず、米国トランプ大統領は全く音無しの構え。今回の発射は、北朝鮮が一向に進展しない米国との交渉に苛立ちを見せているものと思われます。
 朝鮮側の複雑な思惑の交錯について、2019年11月1日付VOA記事「Eyeing Impeachment Inquiry, North Korea Pushes US on Denuclearization Deadline」が報じています。
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FILE - President Donald Trump reacts to the crowd after speaking during his reelection kickoff rally at the Amway Center, June 18, 2019, in Orlando, Fla. 本年6月に再選に向けてのフロリダ州でのキックオフにて(上記VOA記事より)

<状況>
① 10月31日(木)、北朝鮮は再びミサイルを発射、ミサイルは日本海の日本の排他的経済水域内に落下。北朝鮮は、米朝交渉が本年末に期限を迎える前に、非核化と引き換えの経済制裁の先行的緩和などの一定の進展を促すため、これらの一連の段階的に高いプレッシャーをかけているものと思われる。事実、北鮮政府は発射前に同趣旨の声明を出している。

② 本年(2019年)2月のハノイでの米朝首脳会談の後、特段の進展なく、10月のストックホルムでの事務レベル交渉でも進展なく、北朝鮮高官は期限を無視するのは米側にとって「重大な誤り」であり、いつでも交戦に至る可能がある旨、警告している。

③ これらの背景として、北朝鮮では複雑な思惑が交錯。北朝鮮にとって弾劾審査は左程重視しておらず、むしろ来年の次期大統領選を最重要視。北朝鮮は、来年の選挙を見越して本年末の交渉進展期限を設定。トランプの再選なき場合、米朝関係は逆戻りの可能性もある。よって、現トランプ政権のうちに交渉を進め制裁緩和を獲得したい、と企図。他方、金正恩にとり、歴代の米大統領は北朝鮮との直後交渉を拒んでおり、首脳会談まで実施できたのはトランプ大統領のみであり、実は再選が望ましい。交渉の足踏み状態への焦れあるものの、トランプを国内的窮地に追いやることは避けたい。複雑な思いで状況を見極めている模様。

④ 他方、トランプ米大統領は、9月以来弾劾問題(※)への対応に全力投入、現在下院において弾劾審査の手続きの渦中。北朝鮮との非核化交渉で米側が先行的に譲歩し、経済制裁を緩和するような政治的にリスクが高いことは何もしないであろう、と見られている。(※次期大統領選の有力候補バイデン氏の子息のウクライナ国内での問題の捜査をめぐり、トランプ米大統領が同国への援助をテコに恣意的に関与した、との疑惑)

<私見ながら>
◯ 北朝鮮が、米朝交渉の暗礁乗り上げ状態に対して、焦れに焦れていることは明白ですね。これまでもミサイル発射は数度に及んでありましたが、もはや「テスト(=発射実験)」や「データ収集のため」の段階のものではなく、必要ないのに政治的メッセージの発信という手段になっています。これまでも、政治的メッセージとして国営放送で相手を口汚く罵ったり、国連や交渉後のぶら下がり会見で北朝鮮高官が不快感や要求などのコメントを発することがありました。また、ワザと米本土に届く長射程化や潜水艦発射化、弾頭の多弾頭同時多目的攻撃可能化などをPRしたこともありました。今回のは、PRすべきほどの驚愕のものはなく、発射時間もこれまで早朝だったのに今回は夕暮れ時。結局、焦れや不快感をPRしているとしか、今回の発射理由の解釈の仕様がない感じです。
   他方で、金正恩のトランプに対する愛憎合わせ持つ複雑な心境は、十分に理解できます。

◯ では、その気持ちはトランプに伝わっているのか? 全く伝わらないないでしょうね。状況④の通り、トランプさんは今、バイデン氏の息子をウクライナ政府に不当な圧力をかけて捜査させたとの疑惑でてんやわんや。大統領としても本来の内政政策や外交政策を脇において、この問題への対応のために報道官を新たに採用したり、CMを作ったり、共和党議員と次々に会ったり、・・・。なぜなら、つい2ケ月前くらいまでは弾劾はないだろうと言われていたこの案件が下院で可決され、上院で審査となるのはほぼ確実。歴史上この境遇になった人はトランプさん以前には、南北戦争時代のアンドリュー・ジャクソンとクリントン、そして上院の弾劾の前に辞任したニクソンの3人しかいないのですから。何とか、そんなことで歴史に名を残すことがないように、とトランプ大統領の頭にはこれしかありませんよ。

   自分のケツに火の粉がかかった状態ですから、恐らく北朝鮮への対応などout of 眼中。トランプ米大統領は、北朝鮮のミサイル発射の報を受け、まず初めは「この忙しい時になんてバカなことを・・・」と内心激怒し、それでも落ち着いて側近の説明や分析を聞き、言いたいことはグッと丸呑みして、マスコミの前では大人の対応。いやー、トランプさんも成長しましたね。結果的に、焦れったくてミサイル発射し、「期限」を振りかざして米国の譲歩=制裁緩和〜解除を期待したって、トランプ米大統領は相変わらず塩対応なのです。
   実質的な対応は何もしないでしょう。北朝鮮のいう「期限」とは、米国が一方的に制裁を解除することが非核化のスタート、とでも考えているようです。その一方で、米国の考えでは、まず北朝鮮が非核化の具体的なプロセスとして実質的な核実験施設や核の濃縮技術などの核開発施設の廃棄を進めるとか、そういった非核化の実質的推進の証拠を見せない限り、制裁は解かないと終始明言しています。 よって、「期限」を振りかざしたところで何も動かない。結局、北朝鮮の「片思い」ないし「一方的な思い込み」の強い瀬戸際外交としか言いようがありません。

   怖いのは、北朝鮮が更に焦れて、「おい!期限を無視すんじゃないよ!」とばかり、例えばグアム島やハワイ諸島の近所にミサイルを撃つとか、そんな状況を見誤ったことをしたら、さぁ大変。トランプ大統領は必ず実力行使に出るでしょう。むしろ、直接軍事衝突の一歩手前を演出して、弾劾が吹き飛ぶような危機を作り、対北朝鮮で米国の国論を統一するかも・・・・。北朝鮮がそうした愚挙に出なければいいのですが。

(了)


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