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2018/09/03

マクナマラの教訓: ⑧ベトナム戦争 本格介入~泥沼化からの教訓

<映画「フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白」に学ぶ ⑧ベトナム戦争: 本格介入~泥沼化からの教訓>

 いよいよベトナム戦争の泥沼化の辺り、映画フォッグ・オブ・ウォーにてモリス監督が最も核心部分と思っている辺りの話に差し掛かってきました。ベトナム戦争は奥が深く、いろいろ紐解けば切りがないのですが、あくまでこの映画の流れを追いながら、今回の教訓⑧「自分のそもそもの論拠も再検証するつもりでいよ。Be prepared to reexamine your reasoning. 」を反芻してまいりましょう。
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 映画では、前回の教訓までで見てきたように、トンキン湾事を契機に大統領に強大な戦争権限が与えられ、必要な措置がとれるようになりました。その後の米国のベトナム戦争への本格介入の様を、映像は当時のニュース映像の継ぎ接ぎをしながら追っていきます。
 本格的北爆の開始、・・・これで第2次大戦の全ての爆弾の量を超える猛烈な爆撃を北ベトナムに与えます。陸上部隊の投入、・・・航空基地の航空機やヘリを守るために仕方ない、との判断でした。逐次の更なる兵力投入、・・・全く好転しない戦況を巻き返せずとも現状維持するための仕方なしの策なのだ、との判断でした。しかし、北ベトナム軍・南ベトナム解放戦線との激戦は続き、テレビの映像で現地の泥沼の対ゲリラ戦を、アメリカ兵の死傷者の増大、疲弊するアメリカ将兵の姿を、巻き込まれて無残な姿で死んでいく現地のベトナム人たちの姿を、現地取材するマスコミの特派員を通じて米本土の国民達が毎日目にすることになりました。そこにあるのは、どう見ても益々泥沼に足を取られていく米国の姿でした。

 マクナマラ氏は、キューバ危機の教訓と比較してこう説明します。「キューバでは相手に感情移入してみることによって冷静沈着、合理的かつ適切な状況判断ができた。しかし、ベトナム戦争ではそれができなかった。米側は『冷戦』の一正面として戦い、他方ベトナム側は米国を侵略者として捉え『内線』を戦ったのだ。」と。
 同氏がこういう結論に至ったのは、1995年に同氏がベトナムを訪れ、あれほどの損害を出さずとも双方が当時の目的を達成できる方策があったのではないか、との仮説を胸に、当時の米越の高官間の意見交換を持った時の、危うく喧嘩になるくらい激論になったショッキングな内容からでした。

 戦争当時ベトナム側の外相であったタク氏とマクナマラ氏の会話です。
  タク氏: “You’re totally wrong. We were fighting for our independence. You were fighting to enslave us.”  
        「貴方は完全に間違っている。我々は国の独立のために戦っていた。あなた方は我々を奴隷にするために戦っていたのだ。」
  マク氏: “Do you mean to say it was not a tragedy for you, when you lost 3,400,000 Vietnamese, killed, which on our population base is the equivalent of 27 million Americans? What did you accomplished? You didn’t get any more than we were willing to give you at the beginning of the war. You could’ve had the whole damn thing: independence, unification.” 
        「いやいや、それではあの戦争はあなた方にとっても悲劇だったとは思わないのですか?340万名もの貴国国民が死亡した。これは米国の人口に換算すれば2700万名に当たる。この戦争であなた方は何を達成したというのか?戦争初期に我々が喜んで提供したであろう独立や統一のようもの以上には、決して達してなかったではないか?」
  タク氏: “Mr. McNamara, you must never have read a history book. If you had, you’d know we weren’t pawns of the Chinese or the Russians. McNamara, didn’t you know that? Don’t you understand that we have been fighting the Chinese for 1000 years? We were fighting for our independence, and we would fight to the last man. And we were determined to do so, and no amount of bombing, no amount of U.S. pressure would never have stopped us.” 
        「マクナマラさん、貴方は歴史の本を読んだことがないはずだ?もし読んだのなら、我々が中国やロシアの手先になどならない、と分かるはずだ。我々は1000年も中国と戦ってきた。我々は我が独立のためにこそ戦い、最後の一兵まで戦い続けただろう。いかなる量の爆撃を喰らおうと、いかなる物量の米国からの圧力をかけられようと、何者も我々を止めることはできないのだ。我々はそう決意しているのだ。」

 マクナマラ氏にとって、このやりとりはショッキングだったようです。とともに、これまで自分たちが「いやいや冷戦の一環だったんだよ。」と説明してきたことの屋台骨が揺らいだ感があったのではないでしょうか。米国にとっては、確かに紛れもなく冷戦時代に起きた冷戦の一正面の政策だったことに間違いありません。主たる脅威はあくまでソ連、そしてソ連を中心とする東欧、中国だったでしょうし、その共産陣営が世界のあちこちで自由主義陣営を内部から蝕んでいく…、というドミノ理論的な恐怖があったのは間違いないでしょう。マクナマラ氏はまさにそのど真ん中にいたわけですから。しかし、この当時のベトナム高官とのかみ合わない話を通じて、気づきを得たのでしょう。その「冷戦」史観を離れて、はた、と立ち止まって考えたのではないでしょうか。

 同氏は、この会話を紹介したのち自らの教訓を導きます。
 教訓⑧ 「自分のそもそもの論拠も再検証するつもりでいよ。Be prepared to reexamine your reasoning. 」です。(今回英語ばかりで済みません。浅学菲才な私の訳や要約で説明するのではなく、同氏が至った教訓の意味、考えをストレートに理解してもらうには同氏の言葉をそのままお伝えした方が得策と思いますので、アシカラズ。)

  “What makes us omniscient? Have we a record of omniscience?
  We are the strong nation in the world today.
   I do not believe we should ever apply that
  economic, political or military power unilaterally.
  If we had followed that rule in Vietnam,
  we wouldn’t have been there.
  None of our allies supported us.
  Not Japan, not Germany, not Britain or France.
  If we can’t persuade nations with comparable values of the merit of our cause,
  we’d better re-examine our reasoning.
  「我々は全知全能になったのか?とんでもない、全知全能であったことなどない。
  確かに、我々米国は世界最強の国家である。
  しかし、その力を政治、経済、軍事等の力を米国一国のみで一方的に適用すべきではない。
  そのルールに従っていれば、ベトナムには行かなかったであろう。
  日本も、ドイツも、英国も、フランスも、同盟国の誰もが我々を支持しなかった。
  もし我々が、我々の社会的大義に値する価値観についてそうした同盟国に対し説得ができないのなら、我々は我々自身の論拠・論理について見直し・再検討をすべきなのだ。」

 
 イラク、アフガンとの戦争、そして最近のトランプ大統領の対外政策等々を見ていると、マクナマラ氏の警鐘は深く学ぶ価値が十分にあると、つくづく思います。
 (了)

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